7/5 マタイ福音書のイエス (第83回)~伝えるべき伝言を伝令する〜
- 平岡ジョイフルチャペル

- 6 日前
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2026年7月5日 主日礼拝
聖書講話 「マタイ福音書のイエス (第83回)~伝えるべき伝言を伝令する〜」
聖書箇所 マタイ福音書 10章26〜28節 話者 三上 章
[聖書協会共同訳]
10章 26節 「人々を恐れてはならない。覆われているもので現されないものはなく、隠れているもので知られずに済むものはないからである。27節 私が暗闇であなたがたに言うことを、明るみで言いなさい。耳打ちされたことを屋根の上で言い広めなさい。28節 体は殺しても、命は殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、命も体もゲヘナで滅ぼすことのできる方を恐れなさい。

26 Μὴ οὖν φοβηθῆτε αὐτούς · οὐδὲν γάρ ἐστιν κεκαλυμμένον ὃ οὐκ ἀποκαλυφθήσεται, καὶ κρυπτὸν ὃ οὐ γνωσθήσεται.
ですから,あなたがたは恐れないでください←彼らを.なぜなら,いかなるものも覆われてしまっていないからです//←覆いを取られないであろう.そして(いかなるものもいないでしょう)←隠されて//←知られないであろう.
26.1 「ですから,あなたがたは恐れないでください←彼らを」
26.1.1 「ですから」
福音書記者マタイは,イエスの口を借りて,家の教会のクリスチャンたちに熱意をもって語りかけている.外からの反対・迫害に対して,クリスチャンは堅忍不抜を保つことによって鍛え上げられ,その結果,キリスト教が前進・拡大していく.「ですから」とは,そういうこと.
26.1.2 「あなたがたは恐れないでください」
マタイはクリスチャンたちに,戦闘の中にある伝令兵のように,伝言を死守すべく,いかなる強敵にも屈するな,と励ましている.
26.1.3 「彼らを」
「彼ら」とは,福音書物語の時点では,エルサレム神殿の中にあるサンヘドリンの祭司長や長老団.他方,マタイ教会の時点では,マタイ共同体に敵対するユダヤ教のシナゴーゲーを統治する長老たち,およびその配下にある宗教警察であろう.
26.2 「なぜなら,いかなるものも覆われてしまっていないからです//←覆いを取られないであろう」
26.2.1 「なぜなら」
反対者を恐れてはいけない理由を導入する.
26.2.2 「いかなるものも覆われてしまっていないからです//←覆いを取られないであろう」
言い換えると,「覆われてしまっているすべてのものが,覆いをとられるであろう」となる.何のことを言っているのだろうか?イエスは学友たちを励ましているのであるから,それは肯定・希望の内容であるに違いない.それは何か?マタイ教会のクリスチャンたちが直面している状況に照らすならば,遠からず到来するであろう,キリスト教が世界を平和で幸福にする時代のことであろう.その理想の時代は,今はすっかり覆われてしまっているが,そのうち必ず覆いを取られるであろう.この強い期待を,続く言葉が裏打ちしている.
26.3 「そして(いかなるものもいないでしょう)←隠されて//←知られないであろう」
現時点では,理想の時代は世界中の人たちに隠されているが,必ず知られるようになる.それが知られるようになるということは,現在に至るまでのキリスト教の歴史によって部分的に証明される.アッシジのフランチェスコ.新渡戸稲造.賀川豊彦.ドイツの白バラの学生たち.コルベ神父.ゼノ修道士.蟻の街のマリア.マザーテレサ.
27 ὃ λέγω ὑμῖν ἐν τῇ σκοτίᾳ, εἴπατε ἐν τῷ φωτί · καὶ ὃ εἰς τὸ οὖς ἀκούετε, κηρύξατε ἐπὶ τῶν δωμάτων.
わたしがあなたがたにその暗の中で語っていることを,あなたがたは語ってください←その光の中で.そしてその耳の中にあなたがたが聞いていることを,あなたがたは伝令してください←諸々の屋上で.
27.1 「わたしがあなたがたにその暗の中で語っていることを,あなたがたは語ってください←その光の中で」
27.1.1 「わたしが」
マタイ教会の時点では,福音書記者マタイや教会の指導者を指すであろう.彼らは家の教会で福音を語った.女性名詞の「暗」に定冠詞「ヘー」が付いているのは,特定の家の教会を指すからであろうか.
27.1.2 「その暗の中で」
家の教会は夕暮れに開始した.そして内密に行われた.そういう状況を「その暗の中で」と言う.
27.2.3 「その光の中で」
中性名詞の「光」にも定冠詞「ト」が付いているのも,特定の家の教会指すからであろう.福音書記者マタイは,クリスチャンたちに公然と家の教会を開催してください,コソコソと家の教会に行くのではなく,堂々と行きなさい,と言っている.誰かに「どこへ行くのですか?」と聞かれたならば,正直に「家の教会に行くのです」と答えなさい,と言っている.家の中で聞いた復活したイエスの話を,家の中だけに留めておくのではなく,家の外でも語りなさい,と言っている.夕暮れ時だけではなく,朝も昼も夜もである.
27.2 「そしてその耳の中にあなたがたが聞いていることを,あなたがたは伝令してください←諸々の屋上で」
27.2.1 「その耳の中にあなたがたが聞いていることを」
中性名詞の「耳」に「ト」という定冠詞が付いているのは,復活のイエスの伝言をしっかりと聞いたあなたの耳ということであろう.それをあなたの耳の中にだけしまっておいてはいけません,と言っている.
27.2.2 「あなたがたは伝令してください←諸々の屋上で」
「伝令してください」と訳した定動詞「ケーリュッソー」は,戦闘の前線に配置された兵士たちの中から選ばれた「ケーリュクス」という伝令使が,将軍から与った重要な伝言(ケーリュグマ)を本国(ポリス)の司令官に命がけで伝えることを意味する.

たとえば,マラトンの戦いの伝令の伝説.紀元前490年,アテネ・プラタイア連合軍がアケメネス朝ペルシア軍をアッティカ東北岸マラトン平原で破った戦闘.後代の伝説によると,マラトンからアテネまで約40キロを,一人の走者フェイディピデスが勝利を伝えるために走り切り,「我々は勝てり」と叫んで倒れたという.
イエスの復活の福音は命がけで伝えられなければならない.

27.2.3 「諸々の屋上で」
家の教会は平たい屋上をもっていた家屋であったが推察される.「屋上」は複数形.この家の教会もあの家の教会もどの家の教会も,家に入りきらず路上にあふれた聴衆のために,伝令使なるクリスチャンは屋上から福音を語らなければならない.
28 καὶ μὴ φοβεῖσθε ἀπὸ τῶν ἀποκτεννόντων τὸ σῶμα τὴν δὲ ψυχὴν μὴ δυναμένων ἀποκτεῖναι · φοβεῖσθε δὲ μᾶλλον τὸν δυνάμενον καὶ ψυχὴν καὶ σῶμα ἀπολέσαι ἐν γεέννῃ.
そしてあなたがたは恐れるのをやめてください←//殺すであろう人たちを←肉体を/しかし,たましいを殺すことができないであろう人たちを.そうではなく,あなたがたは恐れ続けてください/←むしろ/できるであろうお方を←たましいも肉体も滅ぼすことが←ゲエンナの中で.
28.1 「そしてあなたがたは恐れるのをやめてください←//殺すであろう人たちを←肉体を/しかし,たましいを殺すことができないであろう人たちを」
28.1.1 「あなたがたは恐れるのをやめてください」
反対者におじけついていたクリスチャンもいたのであろう.福音書記者マタイは,もう恐れるのをやめてください,と励ます.現在時称の否定は,現在ある状態を止めるという意味合いがある.英語で言えば,“stop being afraid ”である.
28.1.2 「殺すであろう人たちを←肉体を/しかし,たましいを殺すことができないであろう人たちを」
反対者は迫害によって肉体を殺すことができるかもしれないが,「たましい」(プシュケー)までも殺すことができない.「プシュケー」は,本来「いのち」という意味であるが,ここでは「たましい」と理解するのが妥当である.「たましい」は,神の主権の下にある.人間ごときがどうこうできるものではない.その意味では「プネウマ」と同義語と見なしてよいであろう.

たとえば,殉教者ステパノスは,息を引き取る時,主イエスに向かって「わたしのプネウマを受け取ってください」と言った(『使徒行伝』7章59節).ここの「プネウマ」は,マタイの「プシュケー」と同義語である.
28.2 「そうではなく,あなたがたは恐れ続けてください/←むしろ/できるであろうお方を←たましいも肉体も滅ぼすことが←ゲエンナの中で」
クリスチャンが恐れ続けるべき方は,たましいも肉体もゲエンナの中で滅ぼすことができる神だけである.ゲエンナとは神の裁判の象徴である.福音書記者マタイは,神の裁判という意識を保持していた.彼は死後の生を固く信じていた.



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