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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

4/14 マルコ福音書のイエス (第154回)~〈篤志家学友たちの貢献〉の幕〜

2024年4月14日 主日礼拝

聖書講話   「マルコ福音書のイエス (第154回)~〈篤志家学友たちの貢献〉の幕〜」  

聖書箇所    マルコ福音書 15章42〜47節   話者 三上 章



    聖書協会共同訳

      [下線は改善の余地があると思われる部分]

42 すでに夕方になった。その日は準備の日、すなわち安息日の前日であったので、 43 アリマタヤ出身のヨセフが、思い切ってピラトのもとへ行き、イエスの遺体の引き取りを願い出た。この人は高名な議員であり、自らも神の国を待ち望んでいた人であった。44: ピラトは、イエスがもう死んでしまったのかと不思議に思い、百人隊長を呼び寄せて、すでに死んだかどうかを尋ねた。45 そして、百人隊長に確かめたうえで、遺体をヨセフに下げ渡した。46 ヨセフは亜麻布を買い、イエスを取り降ろしてその布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入り口に石を転がしておいた。 47 マグダラのマリアとヨセの母マリアとは、イエスの納められた場所を見届けた。

 

 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.


42 Καὶ ἤδη ὀψίας γενομένης, ἐπεὶ ἦν παρασκευή, ὅ ἐστιν προσάββατον,

そしてすでに夕方になった後,準備,すなわち安息日の夕べであったので,


42.1 伝承史的考察

 ブルトマンによると,この墓の場面は基本的に史実に遡る.ただし45〜45節のピラートゥスと百人隊長の場面は,マルコによる劇的脚色.47節は伝承の後期に属する.

42.2 ローマ帝国時代の磔刑の慣習

 刑柱に付けられた遺体は,一定期間そのまま放置され,動物や鳥たちの餌食とされた.宗教史の観点によると,遺体は大地との接触を拒否された.地下にある死者たちの世界に下ることを禁じられた.死者の魂は刑場の辺りをいつまでも彷徨うことになる.ただしフィロンによると例外があった.皇帝の誕生日のような祭日には,遺体は取り降ろされ,家族に与えられた.しかしユダヤ人の場合は,その特例が適用されないこともあった.ユダヤ教の観点からすると,刑柱上の遺体の放棄は宗教上の掟に違反するものであった.

申命記 21章22-23節

Ἐὰν δὲ γένηται ἔν τινι ἁμαρτία κρίμα θανάτου καὶ ἀποθάνῃ καὶ κρεμάσητε αὐτὸν ἐπὶ ξύλου, οὐκ ἐπικοιμηθήσεται τὸ σῶμα αὐτοῦ ἐπὶ τοῦ ξύλου, ἀλλὰ ταφῇ θάψετε αὐτὸν ἐν τῇ ἡμέρᾳ ἐκείνῃ, ὅτι κεκατηραμένος ὑπὸ θεοῦ πᾶς κρεμάμενος ἐπὶ ξύλου· καὶ οὐ μιανεῖτε τὴν γῆν, ἣν κύριος ὁ θεός σου δίδωσίν σοι ἐν κλήρῳ.


だれかに罪,死刑が生じ,その人が死に,そしてあなたがたが彼を木につるすならば,彼の体をその木の上にさらしておいてはならない.彼をその日に葬りなさい.なぜなら神によって呪われている←十字架につるされている者はだれでも.そしてあなたがたは大地を穢してはならない←それ(大地)をあなたのヤハウェ神は,あなたに相続として与えている.


42.3 「そしてすでに夕方になった後」

 イエスが息を引き取った時刻は午後3時.今はすでに金曜日の夕方である.「夕方」と訳した「オプシア」は午後が進み日没になる時分.イエスの遺体が刑柱にさらされていた期間は,数時間ということになる.

42.4 「準備,すなわち安息日の夕べであったので」

 「準備」とは「安息日の夕べ」.ユダヤ人たちにとってイエスの遺体が刑柱に放置されたままであることは,タブー(禁忌)であった.金曜日の日没前に,遺体は取り降ろされる必要があった.


43 ἐλθὼν Ἰωσὴφ ὁ ἀπὸ Ἁριμαθαίας εὐσχήμων βουλευτής, ὃς καὶ αὐτὸς ἦν προσδεχόμενος τὴν βασιλείαν τοῦ θεοῦ, τολμήσας εἰσῆλθεν πρὸς τὸν Πιλᾶτον καὶ ᾐτήσατο τὸ σῶμα τοῦ Ἰησοῦ.

行った後←イオーセープ,アリマタヤ出身の(または「アリマタヤから来た」),高貴な議員が─彼自身も待望していた←神の王国を─/彼は果敢に入った後←彼はピラートゥスの所へ/そして彼は求めた←イエスの体を.


43.1 「行った後←イオーセープ,アリマタヤ出身の(または「アリマタヤから来た」),高貴な議員が」

43.1.1 「行った後」

 タブーを取り除くといっても,イエスの遺体に簡単に手を出すわけにはいかない.それなりの力をもつ人が行く必要があう.「行った」ということは,イオーセープの家族の墓がエルサレム郊外にあったのかもしれない.

43.1.2 「イオーセープ,アリマタヤ出身の(または「アリマタヤから来た」)」

 「イオーセープ」はありきたりの名前.それゆえ「アリマタヤ出身の」と限定されている.「アリマタヤから来た」とも解釈できる.

 「アリマタヤ」は,LXX サムエル記上 1章1節にサムエルの出生地「アルマタイム」として出ている.ヘブライ語の発音では「ハルマタイム」.エフライムの丘陵地帯に位置し,現代のヤッファからおよそ32キロ.イエスの時代にはサマリア地方に所属.

43.1.3 「高貴な議員」

 「高貴な」と訳した「エウスケーモーン」は「外形が優雅な」が原義.ここでは「高貴な」という意味.すなわち貴族.ということは大土地所有者.「議員」と訳した「ブーレウテース」は「議員」が原義.議員といってもいろいろある.アリマタヤという町の議員なのか.エルサレムのサンヘドリンの議員なのか.少なくともこれくらいの人物でなければ,太刀打ちできない.

43.2 「─彼自身も待望していた←神の王国を─」

 マルコの劇的脚色か.アリマタヤのイオーセープはたんに高貴な議員であるだけではなく,ユダヤ教の神の王国待望に与する人であったと,マルコは言いたい.脚色だからといって,史実ではないと切り捨てるわけにはいかない.

43.3 「彼は果敢に入った後←彼はピラートゥスの所へ」

 どこへ入ったかというと,ユダヤ総督官邸である.「果敢に」ということは,勇気を奮い起こしたということ.いくらイオーセープが高貴な議員であるといっても,行くべき所はユダヤ総督官邸.総督代官のピラートゥスに面会を求めなければならない.もしかしたらイエスの仲間と見なされ,逮捕される危険がある.

43.4 「そして彼は求めた←イエスの体を」

 ピラートゥスとの面会は許可された.イオーセープは忌憚なくイエスの遺体の下げ渡しを求めた.磔刑に処せられた人の遺体はさらされたままであることが,通例であった中で,イオーセープは,残忍で名高いピラートゥスに特例を求めた.だからといって,イエスへの敬愛の表明とするのは,早計.単にユダヤ教んお掟の重視を示すだけかもしれない.


44 ὁ δὲ Πιλᾶτος ἐθαύμασεν εἰ ἤδη τέθνηκεν, καὶ προσκαλεσάμενος τὸν κεντυρίωνα ἐπηρώτησεν αὐτὸν εἰ πάλαι ἀπέθανεν·

ピラートゥスは訝った←彼(イエス)はすでに死亡したのかと/そして呼んだ後←その百人隊長を,彼(ピラートゥス)は彼(百人隊長)に尋ねた←彼(イエス)はとっくに死んだのかと.


44.1 「ピラートゥスは訝った←彼(イエス)はすでに死亡したのかと」

44.1.1 「ピラートゥスは訝った」

 ピラートゥスの訝りはもっともである.磔刑に処せられた人は,普通はすぐには死なない.何日も死の苦しみを味わい続ける.

44.1.2 「彼(イエス)はすでに死亡した」

 「すでに」(エーデー)に注目.死に至る苦しみの軽減.結局,神はイエスを見捨てなかったと,マルコは言いたいのかもしれない.

44.2 「そして呼んだ後←その百人隊長を,彼(ピラートゥス)は彼(百人隊長)に尋ねた」

44.2.1 「そして呼んだ後」

 ピラートゥスは即断しない.確証を求める.

44.2.2 「その百人隊長」

 最後の息を引き取ったイエスを目撃し,「真実にこの人は神の息子だ」と言った人物.この目撃者中の目撃者に,ピラートゥスイエスの死亡確認をしたのは妥当である.

44.3 「彼(イエス)はとっくに死んだのかと」

 「とっくに」と訳した「パライ」は「とうの昔に」が原義.死ぬのが早すぎるという驚きを示す.それゆえ「とっくに」と訳した.


45 καὶ γνοὺς ἀπὸ τοῦ κεντυρίωνος ἐδωρήσατο τὸ πτῶμα τῷ Ἰωσήφ.

そして彼(ピラートゥス)は(イエスの死亡を)知ったので←その百人隊長から,彼(ピラートゥス)は渡した←遺体をイオーセープに.


45.1 「そして彼(ピラートゥス)は(イエスの死亡を)知ったので←その百人隊長から」

45.1.1 「「そして彼(ピラートゥス)は(イエスの死亡を)知ったので」

 ピラートゥスはイエスの死を確認した.

45.1.2 「その百人隊長から」

 ピラートゥスは自ら刑場でイエスの死を目撃したのではない.目撃者である百人隊長の報告を信じた.それほどその百人隊長は信頼できる人物であったと,マルコは言いたいのかもしれない.

45.2 「彼(ピラートゥス)は渡した←遺体をイオーセープに」

 信頼は行動に現れる.ピラートゥスは慣例に反して,イエスの遺体をイオーセープに下げ渡した.「下げ渡した」と訳した「ドーレオー」は「下賜した」という意味合い.


46 καὶ ἀγοράσας σινδόνα καθελὼν αὐτὸν ἐνείλησεν τῇ σινδόνι καὶ ἔθηκεν αὐτὸν ἐν μνημείῳ ὃ ἦν λελατομημένον ἐκ πέτρας, καὶ προσεκύλισεν λίθον ἐπὶ τὴν θύραν τοῦ μνημείου.

そして彼(イオーセープ)は買った後←上等の布を/降ろした後←彼(イエス)を/その上等の布に包んだ/そして置いた←彼(イエス)を←墓の中に←岩から掘り抜かれた/そして転がした←石を←上に←その墓の入り口に.


46.1 「そして彼(イオーセープ)は買った後←上等の布を/降ろした後←彼(イエス)を/その上等の布に包んだ」

46.1.1 「そして彼(イオーセープ)は買った後←上等の布を」

 イオーセープが遺体下げ渡しを許可された時,真っ先にしたことは遺体を包む布を買うことであった.エルサレムは大都市であるから,その種の布を購入することは容易であった.

 その布は「上等の布」であった.「シンドーン」というおそらく上等の麻布.硬くて強く天然の光沢がある. 肌触りが涼しげなため、夏の衣類に向いている. 古代エジプトではミイラの製造の際にも使用された.

 46.1.2 「降ろした後←彼(イエス)を/その上等の布に包んだ」

 次にイオーセープはイエスの遺体を取り降ろし,その上等の布の中に丁重に包んだ.と言っても,イオーセープが一人でしたのではなく,彼の指揮の下で他の人たちも手伝ったであろう.

46.2 「そして置いた←彼(イエス)を←墓の中に←岩から掘り抜かれた」

46.2.1 「そして置いた←彼(イエス)を」

 運んだという作業が記されていない.それほど間を置かずに置いたということか.墓が近くにあることを示唆する.

46.2.2 「墓の中に←岩から掘り抜かれた」

 横穴型で堅固なもの.比較的稀で高価であった.

46.3 「そして転がした←石を←上に←その墓の入り口に」

 一般的習慣ではないが,ないことではなかった.


47 ἡ δὲ Μαρία ἡ Μαγδαληνὴ καὶ Μαρία ἡ Ἰωσῆτος ἐθεώρουν ποῦ τέθειται.

マグダラのマリアとイオーセースの母マリヤは見つめていた←どこに彼(イエス)が置かれたかを.


47.1 「マグダラのマリアとイオーセースの母マリアは見つめていた」

 マルコによる劇的脚色を匂わせる.二人のマリアはことの一部始終をしっかりと観察していた.

47.2 「どこに彼(イエス)が置かれたかを」

 墓所には他の墓もあったのであろう.彼女たちは,間違えのないように,イエスの墓の場所と位置をしかと見届けていた.

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