4/26 マタイ福音書のイエス (第75回)~<12人の弟子>とは何か?〜
- 平岡ジョイフルチャペル

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2026年4月26日 主日礼拝
聖書講話 「マタイ福音書のイエス (第75回)~<12人の弟子>とは何か?〜」
聖書箇所 マタイ福音書 10章1〜4節 話者 三上 章
[聖書協会共同訳]
※下線は修正の余地があると思われる部分
1 イエスは十二人の弟子を呼び寄せ、汚れた霊に対する権能をお授けになった。汚れた霊を追い出し、あらゆる病気や患いを癒やすためであった。2 十二使徒の名は次のとおりである。まずペトロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレ、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、3 フィリポとバルトロマイ、トマスと徴税人のマタイ、アルファイの子ヤコブとタダイ、4 熱心党のシモン、それにイエスを裏切ったイスカリオテのユダである。

以下は原文の解明に基づく三上の語順訳と講解です.
1 Καὶ προσκαλεσάμενος τοὺς δώδεκα μαθητὰς αὐτοῦ ἔδωκεν αὐτοῖς ἐξουσίαν πνευμάτων ἀκαθάρτων ὥστε ἐκβάλλειν αὐτὰ καὶ θεραπεύειν πᾶσαν νόσον καὶ πᾶσαν μαλακίαν.
そして彼(イエス)は召集したあと←12人の学友たちを←彼の,彼(イエス)は与えた←彼らに←能力を←汚れた霊の数々に対する//ための←追い出す←それら(汚れた霊ども)を,そして手当てする←あらゆる種類の病気とあらゆる種類の病弱を.
1.1 「そして彼(イエス)は召集したあと←12人の学友たちを←彼の」
1.1.1 「召集した」
定動詞の「プロスカレオー」は,「上の者が下の者を自分のところに呼ぶ」が原義.たとえば,サッカーの日本代表に召集する.光栄なことである.実力がないと召集されない.イエスから召集されることは,光栄なことである.イエスから実力が認められたという証拠である.
1.1.2 「12人の学友たちを←彼の」
おそらく,いまここで,イエスの大勢の学友たちの中から特別に12人が選抜されたということであろう.「彼の」という人称代名詞に力点が置かれているように思われる.選抜された12人は有頂天になってはいけない.選抜されなかった残りの学友たちも,それなりに優れている.高校野球のベンチを暖めている選手たちにも,それなりの実力と熱意がある.
1.2 「彼(イエス)は与えた←彼らに←能力を←汚れた霊どもに対する」
1.2.1 「与えた」
12人からすると,「与えられた」.自分自身の本来の所有物ではない.ありがたくも下賜された.イエスに感謝しなければならない.他者に誇るべき類いのものではない.
1.2.2 「能力」(エクスーシア)
「エクスーシア」の原義は,「できること」,「能力」である.ただし,文脈上は,自然本来の能力ではなく,イエスから下賜された能力である.世襲の家柄ではない.社会的地位ではない.親からから継承した財産でもない.イエス譲りの能力である.どのような能力か?
1.2.3 「汚れた霊の数々に対する」
汚れた霊の数々を支配する能力である.「汚れた霊の数々」とは何か?人間にとって根源的な悪としか言いようがない邪悪なものである.キリスト教では「ハマルティア」(罪)と言い,仏教では「クレーシャ」と言う.
1.3 「ための←追い出す←それら(汚れた霊ども)を,そして手当てする←あらゆる種類の病気とあらゆる種類の病弱を.」
1.3.1 「ための」(ホーステ)
「ホーステ」は,目的を示唆する.イエスからいただいた能力は,よいことのために使用しなければならない.自分のためばかりではなく,他の人々のために使用しなければならない.二つの目的がある.
1.3.2 「追い出す←それら(汚れた霊ども)を」
ひとつは,罪あるいは煩悩を抑制し,放出する.上に立つ者は,政治家であれ,医者であれ,弁護士であれ,パイロットであれ,大学教授であれ,校長であれ,教員であれ,親であれ,指導すべき立場にある人はだれでも,何よりも第一に,自分の中に潜む悪を抑制し,放出することに,いつでもどこでも留意しなければならない.
1.3.3 「手当てする←あらゆる種類の病気とあらゆる種類の病弱を」
もうひとつは,医療・看護・介護である.高齢化がここまで進行した日本において,特に介護の専門家の増加が切に求められている.わたしの知人が理事長をしている,小樽短期大学を後継する学校が,短大の校舎の数々の処理をどうするかで難儀していた.このたび,ある篤志家がそれらを全部買い取ってくださり,介護福祉学科を擁する専門学校を開設してくださった.初年度にも関わらず,ネパールをはじめアジア各国から,若い学生たちが定員を超えるほど入学してくださった.イエスはこのような活動の開始と進展を喜んでおられる.
2 τῶν δὲ δώδεκα ἀποστόλων τὰ ὀνόματά ἐστιν ταῦτα · πρῶτος Σίμων ὁ λεγόμενος Πέτρος καὶ Ἀνδρέας ὁ ἀδελφὸς αὐτοῦ, Ἰάκωβος ὁ τοῦ Ζεβεδαίου καὶ Ἰωάννης ὁ ἀδελφὸς αὐτοῦ,
12人の使徒たちの名前は,こうである.第一の人はシモーン←ペトロスと呼ばれている,そしてアンドレアス←彼の兄弟,イアコーボス←ゼベダイオスの息子そしてイオーアンネース←彼の兄弟,

2.1 「12人の使徒たちの名前は,こうである」
「12人の使徒たち」(ドーデカ・アポストロイ)という位置づけは,少なくともマタイ教団の中では固定されていたことが,示唆される.イエスの生活と行動を正しく継承した学友たちがおり,その人たちをマタイ教団が継承していると,福音書記者マタイは言いたい.
2.2 「第一の人はシモーン←ペトロスと呼ばれている」
2.2.1 「第一の人」(プロートス)
「プロートス」は,ここでは「第一位の人」を意味すると思われる.その後に,第二位の人,第三位の人,と続く.序列主義の表明と考えるべきではない.イエスの学友たちとその継承者たち,ひいてはクリスチャン全般に序列・優劣の区別はない.
しかし,キリスト教会の確立と進展のためには,それを最前線で担う人がどうしても必要である.そういう責任を担う人は,初期教会では「監督」や「長老」の呼称で呼ばれた.いわゆる世間でいう偉い人ではない.最終責任を負う人である.こんにち,司教と呼ばれたり議長と呼ばれたり代表役員と呼ばれたりもする.後始末もしなければならない.
2.2.2 「シモーン←ペトロスと呼ばれている」
「シモーン」が本名,「ペトロス」は愛称.「岩」という意味.初代教会の歴史を記録したエウセビオスが伝えた伝承によると,ヒエラポリスのパピアスの証言に基づき,ペテロの通訳者であったマルコは,ペテロが伝えたイエスに関する教えをもとに,最古の福音書であるマルコ福音書を書いたとされる.福音書の源泉は,ペテロだと言っている.初期キリスト教の段階で,ペトロはイエス運動の政党の継承者であることが,強調されている(『パピアス断片集』2.15)..
2.3 「そしてアンドレアス←彼の兄弟,イアコーボス←ゼベダイオスの息子そしてイオーアンネース←彼の兄弟」
2.3.1 「アンドレアス←彼の兄弟」
共観福音書ではイエスに近い学友としてしばしば登場する.シモーンの兄弟「アンドレアス」は,ヨハネ福音書では出番がある.5千人の共食の前座.ギリシア人たちをイエスに紹介した.
2.3.2 「イアコーボス←ゼベダイオスの息子」
共観福音書ではイオーアンネースと共にイエスに近い学友として登場する.
2.3.3 「そしてイオーアンネース←彼の兄弟」
この人も,共観福音書ではイエスに近い学友としてしばしば登場する.イアーコーボスの兄弟「イオーアンネース」のほうは,ヨハネ福音書では「主に愛された学友」と同一人物であることが示唆されている.
3 Φίλιππος καὶ Βαρθολομαῖος, Θωμᾶς καὶ Μαθθαῖος ὁ τελώνης, Ἰάκωβος ὁ τοῦ Ἁλφαίου καὶ Θαδδαῖος,
ピリッポスとバルトロマイオス,トーマースとマッタイオス←徴税請け負い人,イアーコーボス←アルパイオスの息子そしてタッダイオス
3.1 「ピリッポスとバルトロマイオス」
3.1.1 「ピリッポス」
ヨハネ福音書に出番がある.5千人の共食のところと,ギリシャ人たちの紹介のところ.どちらかというと,浅はかな人物として描かれている.
3.1.2 「バルトロマイオス」
語義は「タルマイの子」.タルマイは「沢山の溝を持つ」の意で,土地を持つ豊かな人,つまり地主を指している.エウセビオスやヒエロニュムスによれば,インドに行って宣教したという.
3.2 「トーマースとマッタイオス←徴税請け負い人」
3.2.1 「トーマス」
新約聖書外典の『トマスの福音書』では,この福音書の著者とされている.
3.2.2 「マッタイオス←徴税請け負い人」
四福音書のうち『共観福音書』3書は本文中に記者の名前がない.マタイ,マルコ,ルカという各記者の名は2世紀になって現れるもので,誰が書いたかは不明.キリスト教会では古代以来伝統的に『マタイ福音書』の記者は使徒マタイと見なしてきた.
3.3 「イアーコーボス←アルパイオスの息子そしてタッダイオス」
3.3.1 「イアーコーボス←アルパイオスの息子」
マタイ福音書とマルコ福音書にしか登場しない.
3.3.2 「タッダイオス」
マタイ福音書とマルコ福音書にしか登場しない.
4 Σίμων ὁ Καναναῖος καὶ Ἰούδας ὁ Ἰσκαριώτης ὁ καὶ παραδοὺς αὐτόν.
シモーン←カナナイオスそしてイウーダス←イスカリオーテース←実に引き渡した←彼(イエス)を
4.1 「シモーン←カナナイオス」
一番最後の名前.最下位ということだろう.ほかにもシモーンという名の人物がいるから,「カナナイオス」という添名が付けられたのであろう.「カナナイオス」については,「熱心党員」という説があるが,イエス当時は,まだ熱心党なる政治党派は存在していなかった.

4.2 「そしてイウーダス←イスカリオーテース←実に引き渡した←彼(イエス)を」
四福音書では「イエスを引き渡した者」という悪者レッテルが貼られている.紀元2世紀ころには成立していたと見られる『ユダの福音書』では,イエスを最も深く理解した人物として描かれている.多角的視点からのユダ理解が肝要である.



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