10/18 「旧約聖書との対話」(第3回) キリスト教の三つの旧約聖書 ~その違いと由来~

聖書箇所テモテの信徒への手紙二3章16節
話者 北星学園大学チャプレン・教授 日髙嘉彦

キリスト教の聖書は、どの教会でも同じなのでしょうか。新約聖書については、主要な教派が共通の27巻を用いています。しかし、旧約聖書に含まれる書物の範囲は、ローマ・カトリック教会、東方正教会、プロテスタント教会で異なります。この違いは、聖書が初めから現在の一冊の形で存在したのではなく、長い歴史の中で、それぞれの教会に受け継がれてきたことを示しています。今回は、その歴史をたどりながら、聖書を「正典」として受け取るとはどういうことなのかを考えます。
1.三つの教派と旧約聖書
プロテスタント教会では、旧約聖書を39巻としています。これに対して、ローマ・カトリック教会の旧約聖書には、トビト記やマカバイ記など、プロテスタントの正典には含まれない書物があります。また、エステル記やダニエル書には、プロテスタントの聖書にはない部分が含まれています。東方正教会でも、これらに加えてマカバイ記第三などが読まれています。ただし、東方正教会では各教会の伝統によって、収められる書物に違いがあります。
この違いは、教えや実践にも関わっています。たとえば、カトリック教会が教えの煉獄や死者のための祈りには、マカバイ記第二(12章43~45節)などが聖書的な根拠として挙げられます。一方、プロテスタント教会は、それらの書物を正典として受け取っていません。「聖書によれば」と語るときにも、どの教会が受け継ぐ聖書を指しているのかに目を向ける必要があるのです。
2.初代教会が読んだ聖書
初期のキリスト教徒が広く用いたのは、「七十人訳」と呼ばれるギリシア語の旧約聖書でした。その始まりは、紀元前3世紀のエジプト、アレクサンドリアにさかのぼります。ギリシア語を使うユダヤ人のために、まずモーセ五書が翻訳され、その後、ほかの書物も訳されていきました。このギリシア語聖書は、キリスト教がローマ帝国の各地へ広がるうえでも大きな役割を果たしました。



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