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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

8/13 マルコ福音書のイエス (第130回)〜謀略殺人の対象とされた男

2023年8月13日 主日礼拝

聖書講話  「マルコ福音書のイエス (第130回)〜謀略殺人の対象とされた男」

聖書箇所   マルコ福音書 14章1-2節  話者 三上 章


[聖書協会共同訳]

1 さて、過越祭と除酵祭の二日前になった。祭司長たちや律法学者たちは、どのようにイエスをだまして捕らえ、殺そうかと謀っていた

2 彼らは、「祭りの間はやめておこう。民衆が騒ぎ出すといけない」と話していた。

 [下線は改善の余地があると私には思われる部分である]


 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.


1 Ἦν δὲ τὸ πάσχα καὶ τὰ ἄζυμα μετὰ δύο ἡμέρας. καὶ ἐζήτουν οἱ ἀρχιερεῖς καὶ οἱ γραμματεῖς πῶς αὐτὸν ἐν δόλῳ κρατήσαντες ἀποκτείνωσιν·

過越祭 (パスカ)・除酵パン祭 (アジュマ)があった/二日後に.そして探し求めていた/祭司長たちと書記たちは/どのようにして←彼(イエス)を陰謀によって身柄確保した後,殺すかを.


1.1 物語の時代設定

 マルコ福音書物語の時代設定は,生前のイエスの時代.マルコ福音書は歴史文書ではなく物語.歴史的事実を忠実に伝えているとは限らない.物語制作に携わった人たちによる脚色が加えられている.たとえば,義経物語や忠臣蔵物語のように.以下はマルコの創作の可能性が高い.



1.2 「過越祭 (パスカ)・除酵パン祭 (アジュマ)があった」

1.2.1 「があった」

 福音書記者マルコは,過去を振り返る時点から語っている.

1.2.2 「過越祭 (パスカ)」

 ヘブライ語で חַג הַפֶּסַח Ḥag haPesaḥ. 家畜の初子を捧げる牧畜祭に,大麦刈入れの農繁期に除酵パンを食べる農耕祭が結合した.さらにイスラエル人のエジプトでの隷属を想起し,そこからの解放を神に感謝するという出エジプトの歴史的意味が加わった.この祭の名称は,神が全エジプトの人間と家畜に天罰を下したが,門口に子羊の血を塗ったイスラエル人の家には何もせずに通過したことに由来する (出エジプト記 12章) .ユダヤ教の家庭では,祭りの間,神が命じたもの (焼いた子羊,除酵パン,苦葉など) を食べ,その食事の意味を子どもが親に質問する儀式を行う.期間は1週間.


1.2.3 「除酵パン祭 (アジュマ)」

 ヘブライ語で חג המצות (ḥag hamaṣṣôt). 〈種入れぬパンの祭〉とも訳される。本来,ユダヤ暦のニサン月(太陽暦の3月か4月)14日の夜に祝われる過越祭に続く1週間のこと.古くから過越祭の中に組み込まれてしまった。ユダヤ人の先祖がエジプトを脱出した夜,パン種を入れないパンをもって出たことを記念して,1週間,マッツァーと呼ばれる種なしパンを食べる。【石田 友雄】



1.2.4 ユダヤ教の7つの祭

〈春の4つの祭り〉❶ 過越の祭り(ペサハ)❷ 種なしパンの祭り❸ 初穂の祭り

❹ 7週の祭り(五旬祭・シャブオット/ペンテコステ)

〈秋の3つの祭り〉❺ ラッパの祭り(ローシュ・ハシャナ)❻ 贖罪の日(ヨム・キプール)❼ 仮庵の祭り(スコット)

1.2.5 「二日後に」

 過越祭・除酵パン祭が二日先に控えていた.祭りの期間には,エルサレムの住民だけではなく,各地からの巡礼者たちで,町は人々にあふれる.


1.3 「探し求めていた/祭司長たちと書記たちは/」

1.3.1 「探し求めていた」

 定動詞の「ゼーテオー」は「求める」「探す」「探し求める」.ユダヤ教支配体制は「探し求めていた」.何を?彼らが知者であるならば,探し求めるべきことは,当然ながら,真理であり,自己の人格の完成であり,そして一般ユダヤ教徒たちの人間形成であるべきであろう.ところが,彼らは真逆のものを探し求めていた.

1.3.2 「祭司長たちと書記たちは」

 「祭司長たち」(ホイ・アルキエレイス)は,ここでは宗教貴族階級.ローマ帝国支配下における,ユダヤ教最高議会(サンヘドリン)の主力構成員.ユダヤ教社会の内政を委任されていた.「書記たち」は,ここではヘロデ神殿で働く書記たち.彼らの仕事内容は,神殿の経理業務や総務業務.ユダヤ教の伝承や法律の記録業務および教育業務.神殿の歳入から給料を受け取り,神殿支配祭司団に部下として仕えた.

 祭司長たちと書記たちにとって,イエスは神殿支配体制を破壊しかねない危険人物であった.たとえば,太平洋戦争時下の国体に反抗した灯台社の明石順三.創価教育学会(創価学会の前身)の牧口 常三郎と戸田 城聖.日本基督教団は国体に屈服した.

1.4 「どのようにして←彼(イエス)を陰謀によって身柄確保した後,殺すかを」

1.4.1 「どのようにして」(ポース)

 神殿支配体制が探し求めていたものは,真理ではなかった.真理を抹殺する方法であった.

1.4.2 「陰謀によって」

 「陰謀」と訳した「ドロス」の原義は,「釣り針につける餌」.イエスを釣り上げることができる餌とは何か?鋭い釣り針を隠す餌.イエスがそれに食いついたならば,引っかけ,確実に釣り上げる,つまり,まんまと身柄確保できる餌とは何か?この先を読むとわかるが,それはイスカリオテのユダである.


1.4.4 「身柄確保した後,殺す」

 宗教支配体制にとって,イエスの身柄確保が先決である.その後,ナチスの人民法廷のような裁判にかける.裁判は一審制であり,控訴は許されない.有罪イコール死刑である.「白いバラ」運動のゾフィー・ショルとハンス・ショルのギロチンによる処刑を思い出す.


2 ἔλεγον γάρ· μὴ ἐν τῇ ἑορτῇ, μήποτε ἔσται θόρυβος τοῦ λαοῦ.

なぜなら,彼らは言っていた.「その祭りの中で〈・・・〉しないようにしよう←民衆の暴動がないために」


2.1 「なぜなら,彼らは言っていた」

2.1.1 「なぜなら」(ガル)

 原文には「ガル」がある.陰謀の説明.陰謀の手段をあの手この手と探し求めていた理由.


2.1.2 「彼らは言っていた」

 いかにも直接に聞いたかのような話し方.しかし,福音書記者マルコは在世中のイエスに会っていない.そういう物語として作成したということであろう.

2.2 「祭りの中で〈・・・〉しないようにしよう←民衆の暴動がないために」

2.2.1 「その祭りの中で〈・・・〉しないようにしよう」

 「その祭り」とは,過越祭・除酵パン祭.〈・・・〉は省略の部分.前節の「彼(イエス)を陰謀によって身柄確保した後,殺す」を補うのが,順当であろう.祭りの期間には大勢の人々が集まる.その中には血気盛んな人たちもいる.とはいっても,イエスの逮捕を祭りの後まで延期するなら,逮捕の機会を失うかもしれない.そこで例の陰謀である.イスカリオテのユダを使う姑息な陰謀である.


2.3 「民衆の暴動がないために」

2.3.1 「暴動」(トリュボス)

 「トリュボス」の原義は,「群衆の集まりの支離滅裂な怒号」.ここでは「暴動」.

2.3.2 「民衆」(ラオス)

 「ラオス」はユダヤ人たち.彼らの中には血気盛んな人たちもおり,イエスの一声で武装蜂起をする準備ができていた.ユダヤ教支配体制は,民衆の暴動は何としても避けたかった.さもなければ,ローマ軍がエルサレムに進攻し.ポリスも神殿も破壊されてしまう.祭司長たちとその取り巻き連中は,地位も財産も没収されてしまう.

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