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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

9/24 マルコ福音書のイエス (第134回)〜過越食事会の不思議な手配

2023年9月17日 主日礼拝

聖書講話  「マルコ福音書のイエス (第134回)〜過越食事会の不思議な手配」

聖書箇所   マルコ福音書 14章12〜16節  話者 三上 章


聖書協会共同訳

 [下線は改善の余地があると私には思われる部分である]

12 除酵祭の第一日、すなわち過越の小羊を屠る日、弟子たちがイエスに、「過越の食事をなさるのに、どこへ行って用意いたしましょうか」と言った。

13 そこで、イエスは次のように言って、二人の弟子を使いに出された。「へ行きなさい。すると、水がめを運んでいる男に出会う。その人に付いて行きなさい。

14 そして、その人が入って行く家の主人にこう言いなさい。『先生が、「弟子たちと一緒に過越の食事をする宿屋はどこか」と言っています。』

15 すると、席のきちんと整った二階の広間を見せてくれるから、そこに私たちのために用意をしなさい。」

16 弟子たちは出かけて都に行ってみると、イエスの言われたとおりだったので、過越の食事を準備した。


 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.


12 Καὶ τῇ πρώτῃ ἡμέρᾳ τῶν ἀζύμων, ὅτε τὸ πάσχα ἔθυον, λέγουσιν αὐτῷ οἱ μαθηταὶ αὐτοῦ· ποῦ θέλεις ἀπελθόντες ἑτοιμάσωμεν ἵνα φάγῃς τὸ πάσχα;

そして除酵パン(祭)の最初の日に,彼らが過越(の小羊)を屠していた時,イエスに彼の学友たちは言う.「どこに私たちが出かけて行き,準備をいたしましょうか?←あなたが過越(の小羊)を食べるために」


12.1 今日の箇所は,物語の伝承の歴史(伝承史)から観ると,本来,イエスの受難とは関係のないものとして流布していた物語伝承の一部を,福音書記者マルコがこの箇所にはめ込んだと推定される.


12.2 「そして除酵パン祭の最初の日に,彼らが過越(の小羊)を屠していた時,イエスに彼の学友たちは言う」

12.2.1 「除酵パン(祭)の最初の日」

 「除酵パン(祭)」(アジュマ)は,本来「酵母のないもの」という意味.パンに限らない.文脈から「除酵パン(祭)」と訳した.太陰暦であるユダヤ暦でニサンの月の15日にあたる.過越の食事を食べる日である.一日は日没で始まり翌日の日没で終わる.それに対して古代ローマでは,太陽暦であるユリウス暦が採用されたので,一日は夜明けで始まり日没で終わる.

(1)ユダヤの暦と曜日


12.2.2 「彼らが過越(の小羊)を屠していた時」

 「彼ら」は,イエス一行と解釈することもできるが,ここでは「一般のに人々」くらいの意味であろう.「過越(の小羊)」の直訳は「過越」(パスカ).「小羊」とは書かれていない.文脈から「小羊の」を補う.過越の小羊はニサンの月の14日に屠された.これでは15日イコール14日になってしまう矛盾が生じる.さらに矛盾がある.過越の食事を食べる日は,除酵パン祭の最初の日であるにのかかわらず,そうではなく二日目ということになる.伝承史の観点からは,伝承がユダヤ教に詳しくない人たちに伝わっていくにつれて,こういう矛盾が生じたと見ることができる.福音書記者マルコとしては,たとえ矛盾があるとしても,イエスが処刑されたのは小羊が屠され日であったと言いたい.

12.2.3 「イエスに彼の学友たちは言う」

 この度の過越の食事の準備に関しては,イエスが主導権を発揮する.学友たちはイエスの主導を仰ぐのみ.これから起こるであろうイエスの逮捕・裁判・処刑の一連の出来事は,完全にイエスの主導によるものであり,他者から被る悲劇ではない,とマルコは言いたい.

12.3 「どこに私たちが出かけて行き,準備をいたしましょうか?←あなたが過越(の小羊)を食べるために」

12.3.1 「どこに私たちが出かけて行き,準備をいたしましょうか?」

 少し変な質問である.イエスの一行がベタニアの誰かの家に滞在していたと仮定するならば,食事会の場所はそこでもいいのではないだろうか?ただし,イエスはお尋ねの身である.敵対者たちは,イエスの一行がその家に滞在しているという情報を得ていたとしても不思議ではない.食事中に襲ってくることもありうる.もしそうであるなら,他の家のほうが安全であろう.隣の町ベトファゲあたりで,ひっそりと食事会をするのが妥当ではないだろうか,とイエスの学友たちは考えた.


12.3.2 「あなたが過越(の小羊)を食べるために」

 「あなた」はイエスを指す.とは言っても,食べるのは,イエスだけではなく学友たちもである.皆で一緒に食べるのが,イエスの方式.これは初期キリスト教会によっても継承された.

(1)イエスと学友たちの共食

 イエスは誰をも差別せず一緒に食事をした.


13 καὶ ἀποστέλλει δύο τῶν μαθητῶν αὐτοῦ καὶ λέγει αὐτοῖς· ὑπάγετε εἰς τὴν πόλιν, καὶ ἀπαντήσει ὑμῖν ἄνθρωπος κεράμιον ὕδατος βαστάζων· ἀκολουθήσατε αὐτῷ

そして彼(イエス)は派遣する/彼の学友たちの二人を.そして彼らに言う.「そのポリスに行ってください,そしてあなた方に出会うでしょう/一人の人が←水がめを背負っている.彼について行ってください」


13.1 「彼(イエス)は派遣する/彼の学友たちの二人を.そして彼らに言う.」

13.1.1 「彼の学友たちの二人」

 二人一組の派遣.古代ギリシャに由来する方式.ただの二人ではなく,友情の固い絆で結ばれた一組.盗賊に襲われた時には,命がけで力を合わせて対抗する.


13.2 「そのポリスに行ってください」

13.2.1 「そのポリス」

 イエスは,エルサレムとは言わない.エルサレムは真の神を礼拝し,真の神に従って正しい生き方をする人たちが住む所であるべきである.しかし,そうなっていない.イエスを逮捕し,処刑に持って行こうと企てる悪人たちの牙城に成り下がっている.しかも彼らは,民衆に正しい宗教を体現すべき立場にある人たちである.

13.2.2 イエスの自発性

 イエスは,敵対者たちが待ち受けるエルサレムに自発的に行こうとしている.逃げも隠れもしない.あたかもイスカリオテのユダのために,イエスを手渡す機会を作ろうとしているかのように見える.


13.3 「そしてあなた方に出会うでしょう/一人の人が←水がめを背負っている」

13.3.1 「あなた方に出会うでしょう」

 一人の人の方から二人の学友たちに出会う.二人の方から一人の人に出会うのではない.イエスの学友にとって,イエスの予見能力は周知のことがらであった.それをマルコは強調したい.

13.3.2 「水がめを背負っている」

 少し変である.水を運ぶ場合,普通は,男性たちは皮袋を背負った.女性たちは水がめを背負った.除酵祭への巡礼でごったがえしているポリス.そういう状況の中で,水がめを背負った男性がイエスの二人の学友に遭遇するという.ありそうもないが,ありえないことでもない.伝承ではそうでなかったけれども,後からマルコが付け足したと思われる.


13.4 「彼について行ってください」

 これもイエスの予知能力を強調する文言である.


14 καὶ ὅπου ἐὰν εἰσέλθῃ εἴπατε τῷ οἰκοδεσπότῃ ὅτι ὁ διδάσκαλος λέγει· ποῦ ἐστιν τὸ κατάλυμά μου ὅπου τὸ πάσχα μετὰ τῶν μαθητῶν μου φάγω;

そしてどこ(の家)であれ彼が入るなら,その家の主人に言ってください.「その教師が言っています.どこに私の客間がありますか?←過越の食事を私の学友たちと一緒に私が食べる」


14.1 「どこ(の家)であれ彼が入るなら,その家の主人に言ってください」

14.1.1 「どこ(の家)であれ」

 「どこ(の家)」と訳した「ホプー」の原義は,「どこ」.ここでは,文脈から「どこ(の家)」


14.2 「その教師が言っています」

14.2.1 「その教師」

 ギリシャ語は「ホ・ディダスカロス」.男性定冠詞「ホ」+「ディダスカロス」(教師).マルコ福音書では,イエスは一貫して「ホ・ディダスカロス」と呼ばれている.教師とはいえ人間である.マルコのイエスは,まだ「キリスト」に祭り上げられていない.定冠詞「ホ」(その)は,イエスがその家の主人に知られていたことを示唆する.


14.3 「どこに私の客間がありますか?←過越の食事を私の学友たちと一緒に私が食べる」

14.3.1 「私の客間」(ト・カタリュマ・ムー」

 「カタリュマ」は旅人が一時的に滞在する部屋.文脈から「客間」と訳した.それに「ムー」(私の)という代名詞がついている.これも,イエスがその家の主人に知られていたことを示唆する.エルサレムにもイエスに親密な人たちがいた.


15 καὶ αὐτὸς ὑμῖν δείξει ἀνάγαιον μέγα ἐστρωμένον ἕτοιμον· καὶ ἐκεῖ ἑτοιμάσατε ἡμῖν.

そして彼(その家の主人)はあなた方に示すでしょう/大きな二階(席)を←(クリネーが)配備されてある準備万端の.そしてそこに私たちのために準備をしてください.


15.1 「彼(その家の主人)はあなた方に示すでしょう」

 家の主人は疑いをもたない.承知しておりましたとばかりに食事の会場を示す.


15.2 「大きな二階(席)を←(クリネーが)配備されてある準備万端の」

15.2.1 「大きな」

 イエスと12人の学友たちだけではなく,他の人たちも食事会に出席するであろうことを示唆する.「最後の晩餐」は12人であったと決めつける必要はない.「私も入れてください」と頼むなら,入れてもらえたであろう.

15.2.2  「二階(席)」(アナガイオン)

 「アナガイオン」は「二階」という意味.文脈から「席」を補った.通常,食事会の席は二階に設けられた.通りの騒音を避けるため.しばしば一階は店であった


15.2.3 「(クリネーが)配置されてある準備万端の」

 「(クリネーが)配置されてある」(エストローメノン)は,字義通りには「一面に広げられた」「敷かれた」.文脈から「(クリネーが)配備されてある」と訳した.祭りの食事会では,ギリシャ語で「クリネー」,ラテン語で「トリクリニウム」と呼ばれる食事用ベッドが使用された.人々はそこに横になって食事をした.「クリネー」という用語の原義は「傾くこと」「横になること」である.


16 καὶ ἐξῆλθον οἱ μαθηταὶ καὶ ἦλθον εἰς τὴν πόλιν καὶ εὗρον καθὼς εἶπεν αὐτοῖς καὶ ἡτοίμασαν τὸ πάσχα.

そしてその(二人の)学友たちは(家から)出た.そしてそのポリスの中に行った.そして発見した/彼(イエス)が彼らに言ったとおりに.そして彼らは過越(の食事)を準備した.


16.1 「その(二人の)学友たちは(家から)出た.そしてそのポリスの中に行った」

16.1.1 「その(二人の)学友たちは(家から)出た」 

 本当は行きたくなかったであろう.

16.1.2 「そのポリス」

 やはりエルサレムとは言わない.真の神に背くポリス.


16.2 「そして発見した/彼(イエス)が彼らに言ったとおりに」

 イエスの言葉には権威があると,マルコは言いたい.


16.3 「彼らは過越(の食事)を準備した」


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