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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

9/17 ある知者の洞察(27)〜〈一人より二人が快い〉か?

更新日:2023年9月18日

2023年9月17日 主日礼拝

聖書講話  「ある知者の洞察(27)〜〈一人より二人が快い〉か?」

聖書箇所   コヘレトの言葉 4章7〜12節

 [聖書協会共同訳]

7 私は再び太陽の下,空である様を目にした

8 一人の男がいた.孤独で,息子も兄弟もない./彼の労苦に果てはなく,彼の目は富に満足しない./「誰のために私は労苦し/私自身の幸せを失わなければならないのか.」/これもまた空であり,つらい務めである.

9 一人より二人のほうが幸せだ./共に労苦すれば,彼らには幸せな報いがある.

10 たとえ一人が倒れても/もう一人がその友を起こしてくれる./一人は不幸だ.倒れても起こしてくれる友がいない.

11 また,二人で寝れば暖かいが/一人ではどうして暖まれよう.

12 たとえ一人が襲われても/二人でこれに立ち向かう./三つ編みのはたやすくは切れない.

 [下線は改善の余地があると私には思われる部分である]


 以下は,ヘブライ語(MT)とギリシャ語原文(LXX)の解明に基づく三上の私訳と講解.

7節  וְשַׁ֧בְתִּי אֲנִ֛י וָאֶרְאֶ֥ה הֶ֖בֶל תַּ֥חַת הַשָּֽׁמֶשׁ׃

 そして私は回顧した/そして一つの蒸気(ヘベル)を見た/太陽の下で.

   Καὶ ἐπέστρεψα ἐγὼ καὶ εἶδον ματαιότητα ὑπὸ τὸν ἥλιον.

そして私は回顧した/そして一つの空虚(マタイオテース)を見た/太陽の下で.


7.1 「へベル」

 原義は「蒸気」.すぐに消え去るもの.LXXは「マタイオテース」.原義は「空虚」.無駄,無益,無価値,はかなさ,空しさ.「へベル」は,コヘレトの人生観が凝縮した用語である.人生は不条理だ,理不尽だということ.


8節  יֵ֣שׁ אֶחָד֩ וְאֵ֨ין שֵׁנִ֜י גַּ֣ם בֵּ֧ן וָאָ֣ח אֵֽין־לֹ֗ו וְאֵ֥ין קֵץ֙ לְכָל־עֲמָלֹ֔ו גַּם־עֵינ֖יוֹ* לֹא־תִשְׂבַּ֣ע עֹ֑שֶׁר וּלְמִ֣י ׀ אֲנִ֣י עָמֵ֗ל וּמְחַסֵּ֤ר אֶת־נַפְשִׁי֙ מִטּוֹבָ֔ה גַּם־זֶ֥ה הֶ֛בֶל וְעִנְיַ֥ן רָ֖ע הֽוּא׃

独りの男性(エハッド)がいる.そしていない←二人目が,息子も兄弟も彼にはいない.そして終わりがない/彼のすべての労働の成果(アーマール)には.また彼の両目は富に満足しないであろう.そしてだれのために私(アニー)は労働しているのか.そして私の魂をよさから奪っているのか.これもまた蒸気(ヘベル).そして悪い仕事である←これは.


ἔστιν εἷς, καὶ οὐκ ἔστιν δεύτερος, καί γε υἱὸς καὶ ἀδελφὸς οὐκ ἔστιν αὐτῷ· καὶ οὐκ ἔστιν περασμὸς τῷ παντὶ μόχθῳ αὐτοῦ, καί γε ὀφθαλμὸς αὐτοῦ οὐκ ἐμπίπλαται πλούτου. καὶ τίνι ἐγὼ μοχθῶ καὶ στερίσκω τὴν ψυχήν μου ἀπὸ ἀγαθωσύνης; καί γε τοῦτο ματαιότης καὶ περισπασμὸς πονηρός ἐστιν.

独りの男性がいる.そして二人目はいない.そして実に息子も兄弟も彼にはいない.そして終わりがない/彼のすべての労働の成果には.そして実に彼の片目は富に満足しない.そしてだれのためにわたしは労働しているのか.そして私の魂をよさから奪っているのか.そして実にこれは蒸気(ヘベル).そして悪い転げ回り(?)である.


8.1 「独りの男性(エハッド)がいる.そしていない←二人目が,息子も兄弟も彼にはいない」

8.1.1 「独りの男性(エハッド)」

 「エハッド」の原義は「一人の男性」.ここでは一人であることが負の方向に働いているので,「独り」と訳した.一人であること自体は,善くも悪くもない.どういう生き方をするかによって,善くも悪くなる.

8.1.2 「いない←二人目が,息子も兄弟も彼にはいない」

 「二人目」とは,息子や兄弟のような助ける人あるいは後継者.配偶者とは限らない.そういう人がいるかいないか自体は,善悪の区別とはならない.


8.2 「終わりがない/彼のすべての労働の成果には」

8.2.1 「労働の成果」(アーマール)

 「アーマール」の原義は「労働」であるが,ここでは「労働の成果」.

8.2.2 「終わりがない」

 仕事が成功して,これでもかこれでもかと儲かり続ける.これをうらやむ人もいるであろうが,仕事が成功するかしないかも,それ自体は善悪の区別ではない.


8.3 「また彼の両目は富に満足しないであろう」

8.3.1 「富に満足しないであろう」

 飽くことのない富の追求.これも絶対に悪であると断定することはできないが,往々にして悪に傾きやすい.そのようにコヘレトは見ているようである.

8.3.2 ちなみに,LXXは「片目」.ここだけに限らない稚拙な訳である.


8.4 「だれのために私(アニー)は労働しているのか.そして私の魂をよさから奪っているのか」

8.4.1 「私(アニー)」

 主語が「私(アニー)」に転じている.コヘレトは,労働のあり方の問題を,他人事として傍観するのではなく,自分自身の問題として真剣に考察している.私はだれのために労働しているのか?労働に没頭するあまり,「私の魂をよさ(トーバー)から奪っている」のではないだろうか?

8.4.2「よさ(トーバー)」

 「トーバー」(Gk: アガトシュネー)とは,真の意味で生きること.せっかく生まれたからには,真の人生を送りたいというのが,コヘレトの人生観である.

8.5 「これもまた蒸気(ヘベル).そして悪い仕事である←これは」

 成功を過度に追求するあまり,真の人生を失うこと.コヘレトにとって,それは「蒸気(ヘベル)」.「悪い仕事」である.真の人生を生きてこそ,善い仕事となる.なおLXXの「悪い転げ回り」は意味不明.素直に「悪い仕事」と訳せばいいのに,いいところを見せようとする欲が出たか.


9節  טוֹבִ֥ים הַשְּׁנַ֖יִם מִן־הָאֶחָ֑ד אֲשֶׁ֧ר יֵשׁ־לָהֶ֛ם שָׂכָ֥ר טֹ֖וב

בַּעֲמָלָֽם׃               

二人が快い(トーブ)/独りの男性よりも.彼ら(二人)にはよい報酬がある/彼らの労働において.


ἀγαθοὶ οἱ δύο ὑπὲρ τὸν ἕνα, οἷς ἔστιν αὐτοῖς μισθὸς ἀγαθὸς ἐν μόχθῳ αὐτῶν·

二人がよい/独りの男性よりも.彼らにこそよい報酬がある/彼らの労働において.


9.1 「快い(トーブ)」 

 「トーブ」は,「善い」あるいは「良い」よりむしろ「快い」.

9.2 「彼らにこそ」(アウトイス)

 LXXは「二人」を強調し,不必要に「一人」と対比している.

9.3 ありきたりの格言といった水準.コヘレト独自の思想ではないと思われる.とにかく,本節の理由が次節に語られる.


10節    כִּ֣י אִם־יִפֹּ֔לוּ הָאֶחָ֖ד יָקִ֣ים אֶת־חֲבֵרֹ֑ו וְאִ֣ילֹ֗ו הָֽאֶחָד֙

  שֶׁיִּפֹּ֔ול וְאֵ֥ין שֵׁנִ֖י לַהֲקִימֹֽו    

なぜなら,もし彼ら(のどちらか)が倒れるならば,もう一人の男性は彼の仲間を起こすであろう.そしてわざわい!彼,独りの男性に/ところの←倒れるであろう.そして二人目がいない/彼を起こしてくれるための.


ὅτι ἐὰν πέσωσιν, ὁ εἷς ἐγερεῖ τὸν μέτοχον αὐτοῦ, καὶ οὐαὶ αὐτῷ τῷ ἑνί, ὅταν πέσῃ καὶ μὴ ᾖ δεύτερος τοῦ ἐγεῖραι αὐτόν.

なぜなら,もし彼ら(のどちらか)が倒れるならば,もう一人の男性は彼の仲間を起こすであろう.そしてわざわい!彼,独りの男性に/時はいつでも←彼が倒れるであろう,そして二人目がいない/彼を起こしてくれるための.


10.1 「なぜなら,もし彼ら(のどちらか)が倒れるならば,もう一人の男性は彼の仲間を起こすであろう」

10.1.1 「彼ら(のどちらか)」 

 直訳は「彼ら」.ここでは二人一組のどちらか.

10.1.2 いろいろな二人一組に当てはまる.たとえば,ホメロス『イリアス』に登場するアキレウスとパトロクロス.友情の絆で固く結ばれた二人は,戦場で命を懸けてお相手を助けた.

 もう一つの話.私の知っている夫婦のうち,夫が統合失調症を発症した.世間では妻に捨てられることもある.奥さんに私が,「よくご主人を捨てなかったですね?」と言ったところ,彼女は胸を張って答えた.「そんなことをすれば,女が廃ります」


10.2 「わざわい!彼,独りの男性に/ところの←倒れるであろう.そして二人目がいない/彼を起こしてくれるための」

 対人関係のあり方が問われる.「一人」が対人関係を疎かにすると,本当に「独り」になりかねない.

11節  גַּ֛ם אִם־יִשְׁכְּב֥וּ שְׁנַ֖יִם וְחַ֣ם לָהֶ֑ם וּלְאֶחָ֖ד אֵ֥יךְ יֵחָֽם׃

またもし二人が寝るならば,彼らに暖かさがあるであろう.そして独りの男性にとって,どのようして暖かさがあるだろうか?

καί γε ἐὰν κοιμηθῶσιν δύο, καὶ θέρμη αὐτοῖς· καὶ ὁ εἷς πῶς θερμανθῇ;

そして実に二人が寝るならば,暖かさも彼らにある.そして独りの男性はどのようにして暖まるだろうか?


11.1 「またもし二人が寝るならば,彼らに暖かさがあるであろう」

11.1.1 「二人が寝る」

 夫婦がダブルベッドで寝るというような話ではない.たとえば,旅行者.ホテルとてなかった時代,旅人は野宿を余儀なくされた.

11.1.2 「彼らに暖かさがあるであろう」 

 寒い季節には,二人は一緒に寝ることによって,暖かさを維持することができた.一人の旅人であっても,ロバを連れている場合は,ロバのそばで暖をとることができた.


11.2 「独りの男性はどのようにして暖まるだろうか?」

 同伴する人もロバもいない場合,本当に独りである.暖をとるすべがない.


12節  וְאִֽם־יִתְקְפוֹ֙ הָאֶחָ֔ד הַשְּׁנַ֖יִם יַעַמְד֣וּ נֶגְדֹּ֑ו וְהַחוּט֙  

    הַֽמְשֻׁלָּ֔שׁ לֹ֥א בִמְהֵרָ֖ה יִנָּתֵֽק׃     

そしてもし彼(だれか)がその一人の男性を圧倒するならば,二人が彼(だれか)に対抗して立つであろう.そして三重の綱(フート)はすぐには切り離せないであろう.


καὶ ἐὰν ἐπικραταιωθῇ ὁ εἷς, οἱ δύο στήσονται κατέναντι αὐτοῦ, καὶ τὸ σπαρτίον τὸ ἔντριτον οὐ ταχέως ἀπορραγήσεται.

そしてもし一人の男性が攻撃を加えられるならば,二人の男性が彼(攻撃する人)に対抗して立つであろう.三重の綱(スパルティオン)はすぐには切り離せないであろう.


12.1 「もし彼(だれか)がその一人の男性を圧倒するならば,二人が彼(だれか)に向かって立つであろう」

12.1.1 「彼(だれか)がその一人の男性を圧倒する)」

 その男性を圧倒する(=攻撃する)であろう「彼(だれか)」とは,たとえば,旅人を襲う盗賊が考えられる.


12.2 「三重の綱はすぐには切り離せないであろう」

12.2.1 結婚式の祝辞で用いられる文言.もちろん結婚式とは関係がない.本節の前半を説明するために,巷から持ってこられた格言的文言である.

12.2.2 「綱」(フート)

 ヘブライ語の「フート」もギリシャ語の「スパルティオン」も,どちらかといえば,「綱」「ロープ」.一重の綱より二重の綱のほうが強靭である.三重の綱はさらに強靭であるくらいの意味であろう.

12.3 スクルージ老人

 C. ディケンズ『クリスマスキャロル』のスクルージ老人(Scrooge)を思い出す.スクルージ老人は,ケチで冷酷で人間嫌いのがりがり亡者.クリスマスイブの夜,相棒だった老マアレイの亡霊と対面.幽霊に伴われて,知人の家を訪問する.雇い人ボブの家庭のクリスマス:安月給.小さい家.みんなつぎのあたった服.しかし,年に一度の贅沢.ターキー.りんごソースとマッシュポテト.プディング.りんごとみかんと栗.ボブ:「みんな,クリスマスおめでとう!神さま,わたくしたち一同をおめぐみください.」 家族全体:「神さま,私たちをみんなおめぐみください.」貧しいけれども,心暖かい家庭を見せられて,さすがのスクルージーも心を入れかえた.

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