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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

7/7 マタイ福音書のイエス (第6回)~〈星の動きの神学〉を吟味する~

2024年7月7日 主日礼拝

聖書講話  「マタイ福音書のイエス (第6回)

      ~〈星の動きの神学〉を吟味する~ 」  

聖書箇所   マタイ福音書2章7〜10節  話者 三上 章

聖書協会共同訳

  [下線は改善の余地があると思われる部分]

7 そこで、ヘロデは博士たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。

8 そして、こう言ってベツレヘムへ送り出した。「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。私も行って拝むから。」

9 彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子がいる場所の上に止まった。

10 博士たちはその星を見て喜びに溢れた


 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解です.


7 Τότε Ἡρῴδης λάθρᾳ καλέσας τοὺς μάγους ἠκρίβωσεν παρ’ αὐτῶν τὸν χρόνον τοῦ φαινομένου ἀστέρος,

その時,ヘーローデースは内密に呼び出した上で←かのマゴスたちを,確認した←彼らから/その時間を←その輝いていた星の.

7.1 「その時,ヘーローデースは内密に呼び出した上で←かのマゴスたちを」

7.1.1 「その時」

 ヘロデ王が祭司長・書記の一団から,「キリスト」(「そのクリストス」)の誕生の場所について報告を受けた時.マタイは最初からイエスをキリストと同定した上で,ヘロデの口を通して語っている.歴史としては時代錯誤であるが,マタイはそういう歴史風物語を造作している.

7.1.2 「内密に」

 ヘロデ王は自分の企みを祭司長・書記の一団に知られたくない.両者は一筋縄ではない.ヘロデ王はローマ帝国側,祭司長・書記団はユダヤ教支配体制の側.両者は緊張関係にある.

7.2 「確認した←彼らから/その時間を←その輝いていた星の」

7.2.1 「確認した」(アクリボオー)

 新約聖書ではここだけ.ヘロデ王の時代も,占星術が人々を席巻していた時代である.ユダヤ領主にすぎないヘロデ王の上に君臨する,ローマ皇帝ティベリウス(在位:紀元14年 - 37年)は,占星術に造詣が深かったことが,史料によって確認される.同時代の詩人マリニウス(Marcus Manilius)著《アストロノミカ(天文)》と題する叙事詩体の教訓詩5巻に,アウグストゥス帝の在世,ティベリウス帝の治世への言及がある.


 それによると,宇宙は二つの領域から成り立っている.一つは固い領域(地球).もう一つは空虚な領域(天空).

1巻は占星術の起源,天球・天体の説明,2巻は黄道十二宮,その特徴.人間の身体との関係など,3巻は十二宮の作用分野,ホロスコープの決定法など,4巻は十二宮の人間・民族への影響など,5巻は十二宮外に現れる〈しるし〉とその影響などの説明.


ホロスコープ(horoscope 星位図)

 「個人の生誕時における日・月・諸惑星の位置関係を図で示したもの。それによってその個人の人生を占う。普通は黄道を十二宮に分割し、その上に日・月・諸惑星の位置を記号で書き込み、惑星が120度離れていると密接な関係がある、というようないろいろな解釈を行う。その外側に12種の占うテーマ(生命、財産、兄弟、親、子、健康、妻、死、宗教、帝王、善行、牢獄)を方位によって指定したドムス(十二位という)を配することがよく行われる。」(日本大百科全書)

 星の動きが人間の運命に関係するという考え方は,現在では迷信に思われるかもしれないが,当時では最先端の科学であった.

7.2.2 「その時間を←その輝いていた星の」

 ヘロデ王にとって,「その時間」は,その後殺すことになる男児たちの年齢を決定する上で,重要であった.三通りの解釈が可能である.① その星が最初に現れた時間.② その星が輝いていた期間.③ マゴスたちによって観察された時間の長さ.


8 καὶ πέμψας αὐτοὺς εἰς Βηθλέεμ εἶπεν · Πορευθέντες ἐξετάσατε ἀκριβῶς ⸃ περὶ τοῦ παιδίου · ἐπὰν δὲ εὕρητε, ἀπαγγείλατέ μοι, ὅπως κἀγὼ ἐλθὼν προσκυνήσω αὐτῷ.

そして彼(ヘーローデース)は送り出すにあたり←彼ら(マゴスたち)を←ベートゥレエムに/言った.「あなたがたは出向いた上で,精査してください←精確に/その子どもについて.もしあなたがたが(・・・を)発見したならば,報告してください←私に.そうすれば,私も出向いた上で,かしずきましょう←彼(その子ども)に.


8.1 「そして彼(ヘーローデース)は送り出すにあたり←彼ら(マゴスたち)を←ベートゥレエムに/言った」

8.1.1 「送り出す」(ペンポー)

 ヘロデ王にとって,マゴスたちは自分の臣下ではないので,彼らを丁重に送り出す.


8.2 「「あなたがたは出向いた上で,精査してください←精確に/その子どもについて」

8.2.1 「精査してください←精確に」

 ヘロデ大王は,マゴスたちに念に念を入れた慎重な精査を依頼する.

8.2.2 「その子どもについて」

 その子どもがどのような風貌であるか,どのような親の子どもであるか,ベツレヘムのどこにいるのか,などについて.ヘロデ王はその子どもについて,善意で知りたいのではなく,殺すため.


8.3 「もしあなたがたが(・・・を)発見したならば,報告してください←私に」

8.3.1 「(・・・を)発見したならば」

 目的語が書かれていないが,「その子どもを」を充当するのが順当であろう.

8.3.2 「報告してください←私に」

 そうしてくだされば,相応の報酬なしでは済ませませんよ,といういやらしさが伝わってくる感じがする.


8.4 「そうすれば,私も出向いた上で,かしずきましょう←彼(その子ども)に」

8.4.1 「かしずきましょう」(プロスキュネオー)

 「プロスキュネオー」の原義は,「深くおじぎをする」「敬礼する」.もろろんヘロデ王は本気で言っていない.しかしマタイの視点からは,この子どもこそ王たる者が,いや世界中の王がかしづかなければならない王の王である.それとは知らずに,ヘロデ王は「かしづきましょう」と言っている,とマタイは言いたい.


9 οἱ δὲ ἀκούσαντες τοῦ βασιλέως ἐπορεύθησαν, καὶ ἰδοὺ ὁ ἀστὴρ ὃν εἶδον ἐν τῇ ἀνατολῇ προῆγεν αὐτούς, ἕως ἐλθὼν ἐστάθη ἐπάνω οὗ ἦν τὸ παιδίον.

彼ら(マゴスたち)は聞いた後←その王(の言葉)を/出向いた.そして,見よ!その星が←彼らが見た←東方で/先導した←彼らを.ついに(その星は)行った後,留まった←その場所の上に←その子どもがいた.



9.1 「彼ら(マゴスたち)は聞いた後←その王(の言葉)を/出向いた」

9.1.1 「その王(の言葉)を」

 直訳は「その王を」.意味は,ヘロデ王の言葉を,ということ.

9.1.2 「出向いた」

 異教徒であるマゴイたちは出向いたが,ユダヤ教の指導者である祭司長・書記一団は,蚊帳の外.

9.2 「そして,見よ!その星が←彼らが見た←東方で/先導した←彼らを」

9.2.1 「見よ!」(イドゥー)

 伝承またはマタイが,聴衆の注目を引くための間投詞.「イドゥー」と呼びかけられた聴衆は,驚嘆しなければならない.

9.2.2 「その星が←彼らが見た←東方で」

 「その星」は2章2節では目撃できたが,7節の時点では隠れた.しかし,ここ9節では再び姿を現した.昼間か夜間かは書かれていない.使徒的教父のイグナティウスやギリシア教父のクリュソストモスは,昼間であると言っている.しかし,夜間と考えるのが順当であろう.

9.2.3 「先導した←彼らを」

 マゴイたちが出発したエルサレムからベツレヘムまで,10km弱.なぜその星の先導が必要だったのか?その星が特定の家の真上に留まることが,どのようにして確認されることができたのか?歴史の視点からはこういう質問が芋蔓式に出てくる.あるいはこういう質問をすることが野暮なのか?つべこべ言わずに,数あるこの種の宗教説話の一つとして素直に読めばよいのか?

9.3 「ついに(その星は)行った後,留まった←その場所の上に←その子どもがいた」

9.3.1 「留まった←その場所の上に←その子どもがいた」

 ギリシア教父のクリュソストモスでさえ,無理な話であると言っている.他方,初期キリスト教文献の『ヤコブ原福音書』によると,その星は,イエスの頭の真上に留まったと言う.しかし,これは後付け.

10 ἰδόντες δὲ τὸν ἀστέρα ἐχάρησαν χαρὰν μεγάλην σφόδρα.

彼ら(マゴスたち)は見た時←その星を/喜んだ←大きな喜びを←極度に.

10.1 「彼ら(マゴスたち)は見た時←その星を」

10.1.1 「見た時」

 その星の位置については書かれていない.

10.1.2 「その星」

 どのような星であるかも,書かれていない.

10.2 「喜んだ←大きな喜びを←極度に」

10.2.1 「喜んだ」(「カレオー」)

 何倍ものの喜びを表す.マタイは,マゴスたちに付託して,自分が体験した喜びを誇張して語っている.「極度に」(「スポドラ」)はマタイ好みの言葉.彼らをキリストのところまで先導した星が,大きな喜びの源泉であるということは,体験談としてはわからないではない.

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