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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

7/2 マルコ福音書のイエス (第126回)〜選民主義者の姿に潤色された男

2023年7月2日 主日礼拝

聖書講話  「マルコ福音書のイエス (第126回)〜選民主義者の姿に潤色された男」

聖書箇所   マルコ福音書 13章20〜23節  話者 三上 章


 [聖書協会共同訳]

20 主がその期間を縮めてくださらなければ、誰一人救われない。しかし、主はご自分のものとして選ばれた人たちのために、その期間を縮めてくださったのである。

21 その時、『見よ、ここにメシアがいる』『見よ、あそこだ』と言う者がいても、信じてはならない。

22 偽メシアや偽預言者が現れて、しるしや不思議な業を行い、できれば、選ばれた人たちを惑わそうとするからである。

23 だから、気をつけていなさい。一切のことを、前もって言っておく。」

 [下線は改善の余地があると私には思われる部分である]


 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.


20 καὶ εἰ μὴ ἐκολόβωσεν κύριος τὰς ἡμέρας, οὐκ ἂν ἐσώθη πᾶσα σάρξ· ἀλλὰ διὰ τοὺς ἐκλεκτοὺς οὓς ἐξελέξατο ἐκολόβωσεν τὰς ἡμέρας.

もし切り詰めないならば/主が/その日々を,救われないでしょう/あらゆる種類の身体は.しかしその選ばれた人たちのために/彼(主)が選んだ,彼(主)は切り詰めました/その日々を.

20.1 「もし切り詰めないならば/主が/その日々を,救われないでしょう/あらゆる種類の肉なる者は」

20.1.1 「もし切り詰めないならば/主が/その日々を」

 「切り詰める」(コロボオー)は,元来,「手足を切断する」ことなどに用いられる強烈な言葉.福音書記者マルコは,「主」(キュリオス) が時間と歴史の支配者であると言いたい.「その日々」とは,苦難の日々.たとえば,いまウクライナの人たちが過ごすことをよぎなくされている日々.マルコの希望・期待はわからないでもない.しかしそれは夢である.現実に戦争の日々を支配しているのは,圧倒的な権力と武力を保有している人たちである.そして,彼ら覇権主義者に対抗する私たちこそが,時間と歴史の統治者である.

20.1.2 「救われないでしょう」

 現実の救いと滅亡の話.マルコは天国と地獄の与太話をしてない.「救われない」ということは,滅びるということ.ナチ収容所に収監されたユダヤ人たちのように,むごたらしい死に見舞われること.

20.1,3 「あらゆる種類の肉なる者」

 人間と言わないで「肉なる者」と言う.人格も尊厳もない.敵対する人たちにとって,敵はただの肉の塊.殺すとはいわないで,「除去する」という.豊かな国の人にとっっても貧しい国の人にとっても,どの国の人にとってもである.「あらゆる種類の」(パーサ)とは,そういう意味である.


20.2 「しかしその選ばれた人たちのために/彼(主)が選んだ,彼(主)は切り詰めました/その日々を」

20.2.1 「その選ばれた人たち」

 生前のイエスの時点では,イエスの学友たち.マルコ福音書成立の時点では,マルコ共同体のクリスチャンたち.福音書記者マルコの見るところでは,彼らは「選ばれた人たち」(ホイ・エクレクトイ).誰によって選ばれたかというと,「主」(キュリオス)によってである.主が選んだ人たち,すなわち,私たちマルコ共同体は救われると,マルコは言う.仲間内ではけっこうな話であろう.しかし,そういうマルコの主張は,その裏に,仲間でない人たちは救われないという,排除の考えが潜んでいる.選民意識である.イエスは選民主義者ではなかった.すべての人を平等に受け入れた,と私は認識している.そのイエスをマルコは,選民主義者の姿に潤色した.描写した.行き過ぎである.間違いであるといってよい.

20.2.2 「彼(主)は切り詰めました/その日々を」

 先に未来のこととして語られたことが,ここでは既に実現したこととして語られている.マルコ共同体のクリスチャンたちは,時間と歴史の統治者である主によって,救いへと選ばれた.その証拠として,マルコ福音書とマルコ共同体は,今ここに確かに存在していると,マルコは言う.


21 Καὶ τότε ἐάν τις ὑμῖν εἴπῃ· ἴδε ὧδε ὁ χριστός, ἴδε ἐκεῖ, μὴ πιστεύετε·

そしてその時/誰かがあなたがたに言うならば,「ほらここにクリストスが,ほらあそこに(クリストスが)」,あなたがたは信じるのをやめてください.


21.1 「そしてその時/誰かがあなたがたに言うならば,「ほらここにクリストスが,ほらあそこに(クリストスが)」」

21.1.1 「その時」

 マルコ共同体にとっては,まさに今の時.

21.1.2 「誰かがあなたがたに言うならば」

 「誰か」とはマルコ共同体の中の誰かの可能性がある.終末のうわさが広まっていた状況を示唆する.

21.1.3 「ほらここにクリストスが,ほらあそこに(クリストスが)」

 「クリストス」を僭称する輩が,毒キノコのように,あちらこちらに発生していた.「クリストス」は,通常,「キリスト」と訳される.マルコ共同体にとって,キリストとはイエス・キリストのこと.いつかやがて,といっても,遠からず再来すると,信じられていた.今すぐにではない.このイエス・キリスト再来信仰に乗じて,キリスト僭称者が跋扈していた.


21.2 「あなたがたは信じるのをやめてください」

 マルコ共同体の中には,キリスト僭称者を信奉する人たちも出始めていた.福音書記者マルコは,彼らに,いかさまを信奉するのはやめてくださいと,強く言う.


22 ἐγερθήσονται γὰρ ψευδόχριστοι καὶ ψευδοπροφῆται καὶ δώσουσιν σημεῖα καὶ τέρατα πρὸς τὸ ἀποπλανᾶν, εἰ δυνατόν, τοὺς ἐκλεκτούς.

なぜなら起こされるでしょう/偽クリストスたちと偽預言者たちが,そして(彼らは)与えるでしょう/しるしの数々や奇跡の数々を/道に迷わせることに向けて──できるなら──その選ばれた人たちを.

22.1 「なぜなら目覚めさせられるでしょう/偽クリストスたちと偽預言者たちが」

22.1.1 「なぜなら」

 そのように強く言う理由をマルコは語る.

22.1.2 「目覚めさせられるでしょう」

 「目覚める」(エゲイロー)の受動形.眠っていた人が目覚めさせられる.何によってか?目覚まし時計によってではない.終末の話に動揺し,浮き立つ世相によってである.困難な時代には,それに乗じてボウフラのような連中が覚醒し,悪を行う.

22.1.3 「偽クリストスたちと偽預言者たち」

 彼らの目的は何か?名声と金銭である.加えて快楽.

22.2 「そして(彼らは)与えるでしょう/しるしの数々や奇跡の数々を」

22.2.1 「(彼らは)与えるでしょう」 

 彼らが人々を魅了するために,魅力的な現象を「与える」.演出する.



22.2.2 「しるしの数々や奇跡の数々」

 こんにちでいう手品(マジック).古代人であるマルコ共同体のクリスチャンたちは,マジックにはまりやすかった.単純に信じた.種があるのではないかと疑わなかった.たとえば全盲の人を見えるようにする奇跡.種は,晴眼者の双子を使う.民衆は単純に信じた.そのうわさはあっという間に広まった.

22.3 「道に迷わせることに向けて──できるなら──その選ばれた人たちを」

22.3.1 「に向けて」(プロス)

 プロスは「〜の方向に」という意味.いかさま師たちは,いかさまによって人々をあらぬ方向に誘導する.彼らは,そのつもりはないと言い張るかもしれないが,彼らのやっていることは,そういう結果になる.

22.3.2 「道に迷わせること」

 定動詞形は「アポプラナオー」.「アポ」(〜から)という前置詞+「プラナオー」(道に迷わせる)という動詞.Aという正しい道からBという正しくない道に迷わせること.イエスの信に徹するマルコ共同体の宗教から離反して,軽薄な奇跡信仰に逸脱すること.

22.3.3 「できるなら」

 できるならやってみろという,マルコの鼻息の荒さが伝わってくる.

22.3.4 「その選ばれた人たちを」

 わたしたちは選ばれた者たちなのだと,マルコは念を押す.そんじょそこらの人たちとは違う.そう信じるのは勝手だが,そんじょそこらの人たちのほうが,すぐれている可能性にも思いをいたすべきである.


23 ὑμεῖς δὲ βλέπετε· προείρηκα ὑμῖν πάντα.

他でもなくあなたがたは注視していてください.私は先に語りました/あなたがたにあらゆることどもを.


23.1 「他でもなくあなたがたは注視していてください」

23.1.1 「他でもなくあなたがたは」

 マルコはマルコ共同体に向けて語っている.世間のうわさに惑わされず,世間の流れにも流されず,マルコ共同体の立場を堅持しましょう,と言っている.

23.1.2 「あなたがたは注視していてください」

 何を注視するのか,目的語がないが,世間の動静全体を怠りなく注視し続けてくださいということであろう.こんにちでいえば,国内情勢.災害,コロナ禍,事故,円安,アーバン・ベア・・・.国際情勢としては,ウクライナとロシア.ミャンマー.アフガニスタン.ウィグル.アフリカ諸国.

23.2 「私は先に語りました/あなたがたにあらゆることどもを」

 マルコがイエスに付託して先に語ったあらゆることどもは,現代世界に当てはまて考える必要がある.

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