top of page
検索

6/25 マルコ福音書のイエス (第125回)〜破壊の欲動と創造の欲動

2023年6月25日 主日礼拝

聖書講話  「マルコ福音書のイエス (第125回)〜破壊の欲動と創造の欲動」

聖書箇所   マルコ福音書 13章14〜19節  話者 三上 章


[聖書協会共同訳]

14 「荒廃をもたらす憎むべきものが,立ってはならない所に立つのを見たら――読者は悟れ――,その時,ユダヤにいる人々はに逃げなさい. 15 屋上にいる者は下に降りてはならない.家にある物を取り出そうとして中に入ってはならない. 16 畑にいる者は,上着を取りに戻ってはならない. 17 それらの日には,身重の女と乳飲み子を持つ女に災いがある. 18 このことが冬に起こらないように,祈りなさい.

19 それらの日には,神が天地を造られた創造の初めから今までなく,今後も決してないほどの苦難が来るからである.

 [下線は改善の余地があると私には思われる部分である]

 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.


14 Ὅταν δὲ ἴδητε τὸ βδέλυγμα τῆς ἐρημώσεως ἑστηκότα ὅπου οὐ δεῖ,

ὁ ἀναγινώσκων νοείτω, * τότε οἱ ἐν τῇ Ἰουδαίᾳ φευγέτωσαν εἰς τὰ ὄρη,

あなたがたが見る時はいつでも←荒廃の醜態が立つのを←(立つ)べきでない場所に,

──"読んでいる人"は理解してください──その時ユダヤにいる人たちは,山々に逃げてください.


14.1 物語の流れとしては,場所はオリブ山.語り手はイエス.聴き手はイエスの学友たち.両者共にヘロデ神殿を見下ろしている.

14.1.1 「あなたがたが見る時はいつでも←荒廃の醜態が立つのを←(立つ)べきでない場所に」

 「あなたがた」とは,イエスの学友たち.彼らは「見るであろう」と,イエスは言う.マルコ福音書が作成された時点では,「あなたがた」とはマルコ福音書を共有するマルコ共同体のクリスチャンたち.彼らは「見た」.彼らは直近の過去を回顧する立場に立つ.こんにちマルコ福音書を読む私たちも,「見た」人たちである.何を見るのであろうか?何を見たのか?

14.1.2 「荒廃の醜態が立つのを←(立つ)べきでない場所に」

 「荒廃の醜態」(ブデリュグマ・テース・エレモーセオース)は,ユダヤ教徒の心から払拭できない,紀元前175年のあの忌まわしい出来事を彷彿させる.

 典拠を確認しておこう.第一マカバイ書1章54節〜59節 聖書協会共同訳

「第百四十五年,キスレウの月の十五日には,王は祭壇の上に「荒廃をもたらす憎むべきもの(ブデリュグマ・エレモーセオース」を建てた.人々は周囲のユダの町々に異教の祭壇を築き,家々の戸口や大路で香をたき,律法の巻物を見つけてはこれを引き裂いて火にくべた.契約の書を隠していることが発覚した者,律法に適った生活をしている者は,王の裁きにより処刑された.悪人たちは毎月,町々でイスラエル人を見つけては彼らに暴行を加えた.そして月の二十五日には主の祭壇上にしつらえた異教の祭壇でいけにえを献げた.」

 「王」とは,シリアの王アンティオコス4世.彼はエルサレム神殿の中にある全焼供犠の祭壇の上にギリシャ式祭壇を立てた.ゼウス神像を設置し,豚の供犠を行った.

 ユダヤ教徒にとっても,ユダヤ教の中で育ったマルコ教会クリスチャンたちにとっても,ギリシャ式祭壇やゼウス神像は,エルサレム神殿の中に立ってはならなかった.他方,ギリシャの宗教に浸かって育ったシリア王国の人々にとって,ギリシャ式祭儀はよいものであった.母親の味噌汁か,それとも妻の味噌汁かといった好みの問題である.理性の問題ではない.

14.1.3 「"読んでいる人"は理解してください」

 「"読んでいる人"」は,第一義的には,マルコ共同体におけるマルコ福音書を朗読しているる人のことである.その朗読を聞いている,字が読めない人たちも含む.彼らにとって聞くことは読むこと.マルコ共同体のクリスチャンたちにとっては,「荒廃の醜悪物が立つのを←(立つ)べきでない場所に」は,紀元70年のヘロデ神殿崩壊の出来事をさす.その歴史的過去を重く受けとめてくださいと,福音書記者マルコは警告する.

14.1.4 「その時ユダヤにいる人たちは,山々に逃げてください.」

 ローマ軍の侵攻は,エルサレムだけではなくユダヤ地方全体に及んだ.福音書記者マルコは,ユダヤ地方にいるユダヤ教徒たちの身を案じている.彼にとって,ユダヤ教徒たちは同胞である.ローマ軍による激しい掃討に対して,人々は山々(タ・オレー)に逃れるしかない.「タ・オレー」は複数形.平家の残党や長崎のキリシタンも,同じことを余儀なくされた.


15 ὁ [δὲ] ἐπὶ τοῦ δώματος μὴ καταβάτω μηδὲ εἰσελθάτω ἆραί τι ἐκ τῆς οἰκίας αὐτοῦ,

屋上にいる人は,下りてはいけません.また入ってはいけません←自分の家から何かを取るために.


15.1 「屋上にいる人は,下りてはいけません.」

 屋上に隠れているほうが安全である.

15.2 「また入ってはいけません←自分の家から何かを取るために」

 家財に執着している場合ではない.入口から乱入するローマ兵に殺されてしまう.


16 καὶ ὁ εἰς τὸν ἀγρὸν μὴ ἐπιστρεψάτω εἰς τὰ ὀπίσω ἆραι τὸ ἱμάτιον αὐτοῦ.

そして畑の中に(行く)人は,引き返してはなりません←自分の外套を取るために.


16.1 「畑の中に(行く)人」

 「畑」(アグロス)は,代表的なものとしてブドウ畑やオリーブ畑.隠れやすい.

16.2 「引き返してはなりません←自分の外套を取るために.」

 たしかに「外套」(ヒーマティオン)は,毛布代わりになる.寒さを凌ぐために必要.そうであっても,外套一枚のために命を落とすべきではない.掃討者たちは突然やってくる.着の身着のままで逃げるしかない.ウクライナの人たちを想わざるをえない.


17 οὐαὶ δὲ ταῖς ἐν γαστρὶ ἐχούσαις καὶ ταῖς θηλαζούσαις ἐν ἐκείναις ταῖς ἡμέραις.

ウーアイ!子を宿している女性たち,そして授乳している女性たちは←彼の日々に.


「ウーアイ」は,苦しむ人を目の当たりにした人の叫び.戦闘の最中において,乳児をかかえる母親は,特に弱い立場である.逃げ遅れる.捕まったならひどい目にあう.戦場で戦う夫がいつ死ぬかわからない.福音書記者マルコの思いやりがにじみ出ている.


18 προσεύχεσθε δὲ ἵνα μὴ γένηται χειμῶνος·

あなたがたは祈ってください←(その災いが)冬に起こらないように.


 祈るしかない.祈るべきである.


19 ἔσονται γὰρ αἱ ἡμέραι ἐκεῖναι θλῖψις οἵα οὐ γέγονεν τοιαύτη ἀπʼ ἀρχῆς κτίσεως ἣν ἔκτισεν ὁ θεὸς ἕως τοῦ νῦν καὶ οὐ μὴ γένηται.

彼の日々は危機であるでしょう/←そのようなものが起こらなかったような/←創造の初めから←神が創造した/→今に至るまで,/そして決して起こらない(ような窮地であるでしょう).


19.1 「彼の日々は窮地であるでしょう」

 「危機」と訳した「トリープシス」は,元来,「圧迫する」「押しつぶす」「締め付ける」を含意する.極めて激しい苦しみである.しかも,いまだかってなかったような危機であると,福音書マルコを予告する.「コロナ禍」は,英語でCovid-19 Crisis という.クライシスは「危機」という意味.コロナ禍にまさる人類の危機というと,核戦争.いま世界は核戦争の危機に直面している.この状況を重く受けとめなければならない.どうしてヒトは戦争をするのか?


19.2 生への欲動と死への欲動

 戦争の本能が人間に内在しているから,というのがフロイトの認識である.それによると,ヒトには,生への欲動と死への欲動の両方が組み込まれている.生への欲動は創造へと連動する.死への欲動は破壊へと連動する.破壊の最大のものは,戦争である.もしそうであるなら,戦争はなくならない.それでは困る.だから,私はクリスチャンであることを止めない.イエスの道に従うしかない.

閲覧数:36回0件のコメント
bottom of page