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4/20 ダニエル書を読む(第3回)~ダニエル書の構造とその神学的メッセージ~

  • 執筆者の写真: 平岡ジョイフルチャペル
    平岡ジョイフルチャペル
  • 4月20日
  • 読了時間: 3分


話者 日高嘉彦(北星学園大学チャプレン・教授)


『ダニエル書』は旧約聖書の中でも特異な構成をもつ書であり、全体は前半(1〜6章)と後半(7〜12章)に大きく二分される。前半は「宮廷物語」、後半は「幻とその解説」という黙示文学で構成されており、それぞれ異なる文学形式と神学的主張をもっている。

前半(1~6章):異国の宮廷での忠実な信仰

前半はダニエルとその仲間たちが異国のバビロンやメディアの王宮で仕える物語である。信仰を守り、試練に耐えることによって神の助けを受け、結果的に高い地位に就くという「信仰と栄誉」の型が貫かれている。物語には共通して、危機→信仰の堅持→神の救い→王による称賛という展開があり、物語の最後には異邦の王がユダヤの神を賛美する頌栄が添えられる(ただし第5章を除く)。

また、前半の中心部分(2〜7章)はアラム語で書かれており、「集中構造(キアスムス)」が確認される。2章と7章が「四つの王国」に関する幻で対応し、3章と6章は火の炉・獅子の穴という試練からの救い、4章と5章は高慢な王への神の裁きという内容で並行する。これらは、歴史の背後に神の主権があること、忠実な信仰者は神によって守られることを示す構造である。

後半(7~12章):黙示的幻と終末の希望

後半は、ダニエルが見る四つの幻とその解説からなり、旧約における黙示文学の最初の明確な例である。7章では「人の子のような者」が現れて四つの獣(王国)を裁き、神の支配が確立される幻が描かれる。8章では雄羊と雄山羊の争いを通して中東の歴史的対立が象徴的に語られる。

9章では、ダニエルがエレミヤ書の「70年」を読み、終末までの時代が「70週」に象徴されるという解釈が天使ガブリエルによって示される。10~12章にかけては、幻の内容がさらに詳細に展開され、歴史的な王国(ペルシア、ギリシャ、キッテム=ローマ)や、日数(1290日、1335日)などが具体的に語られ、終末論的期待が頂点に達する。

ここでは初めて「死者の復活」や「最後の審判」が言及され、ダニエル書はユダヤ教・キリスト教における終末論の礎を築く重要な書となった。

前半と後半の関係と全体の神学的意図

前半と後半は文学的には異なるが、神学的メッセージにおいて共通している。「歴史は神の計画のもとにあり、忠実な者は最終的に救われる」という希望の主張が両者に貫かれている。前半が過去の信仰の模範を描き、後半が未来の希望を幻によって描くことで、読者に対し「今、信仰を守って生きること」の意義を示している。

このような構造は『ヨハネの黙示録』とも類似しており、迫害下の信仰共同体にとって大きな励ましとなるよう構成されている。ダニエル書は、信仰と希望の文学として、過去・現在・未来をつなぐ書である。

 
 
 

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