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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

12/31 マルコ福音書のイエス (第143回) ~〈信仰のキリスト〉の〈歴史の イエス〉への投影〜

2023年12月31日 主日礼拝

聖書講話   「マルコ福音書のイエス (第143回)

                   ~〈信仰のキリスト〉の〈歴史のイエス〉への投影〜」  

聖書箇所    マルコ福音書 14章60〜65節   話者 三上 章



    聖書協会共同訳

  [下線は改善の余地があると思われる部分]

60 そこで、大祭司は立ち上がり、真ん中に進み出て、イエスに尋ねた。「何も答えないのか。この者たちが不利な証言をしているが、どうなのか。」61 しかし、イエスは黙り続け、何もお答えにならなかった。そこで、重ねて大祭司は尋ね、「お前はほむべき方の子、メシアなのか」と言った。62 イエスは言われた。「私がそれである。/あなたがたは、人の子が力ある方の右に座り/天の雲に乗って来るのを見る。」 63 大祭司は衣を引き裂いて言った。「これでもまだ証人が必要だろうか。64 諸君は冒瀆の言葉を聞いた。どう思うか。」一同は、イエスは死刑にすべきだと決議した。65 そして、ある者はイエスに唾を吐きかけ、目隠しをしてこぶしで殴りつけ、「言い当ててみろ」と言い始めた。また、下役たちもイエスを平手で打った

 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.

60 καὶ ἀναστὰς ὁ ἀρχιερεὺς εἰς μέσον ἐπηρώτησεν τὸν Ἰησοῦν λέγων· Οὐκ ἀποκρίνῃ οὐδέν; τί οὗτοί σου καταμαρτυροῦσιν;

そして立ち上がった後/その祭司長が/中央に,尋問した/イエスに/いわく.「決してお前は何も答えないのか?何をこの人たちはお前に対して告訴しているのか?」


60.1 「そして立ち上がった後/その祭司長が/中央に,尋問した/イエスに/いわく」

60.1.1 「立ち上がった後」

 ということは,その祭司長と議員たちは座っていた.この姿勢で議事は進行した.

60.1.2 「中央に」

 この位置は,その祭司長が議長であったことを示す.

60.1.3 「尋問した」

 その祭司長は裁判官としてイエスに尋問した.

60.2 「決してお前は何も答えないのか?」

 大祭司はイエスの沈黙に手を焼いている.

60.3 「何をこの人たちはお前に対して告訴しているのか?」」

 その祭司長は,イエスに対する告訴の内容をイエスに聞いている.聞く相手を間違えている.告訴者たちに聞くべきである.ただし,告訴者たちのもろもろの告訴はすでになさられていた.「もろもろの」というのは,告訴は複数あったからである.しかも,それらは互いに矛盾していた.そこで,困ったその祭司長は,イエスに頼むから,告訴内容を教えてくれと懇願するはめになった.

61 ὁ δὲ ἐσιώπα καὶ οὐκ ἀπεκρίνατο οὐδέν. πάλιν ὁ ἀρχιερεὺς ἐπηρώτα αὐτὸν καὶ λέγει αὐτῷ· Σὺ εἶ ὁ χριστὸς ὁ υἱὸς τοῦ εὐλογητοῦ;

彼(イエス)は沈黙していた.そして決して何も答えなかった.再びその祭司長は彼(イエス)を尋問した.そして彼に言う.「お前こそがキリスト・賛美されるべき方の息子なのか?」


61.1 「彼(イエス)は沈黙していた」

 イエスの沈黙は続く.じらし作戦である.

61.2 「そして決して何も答えなかった」

 徹底した沈黙である.その大祭司にとって,これ以上こらえ切れない沈黙である.

61.3 「再びその祭司長は彼(イエス)を尋問した.そして彼に言う」

 その祭司長はイエスの沈黙に負けた.自分の質問に自分が答える.

61.4 「お前こそがキリスト・神聖者の息子なのか?」

61.4.1 「お前こそが〜なのか?」

 一応質問形式であるが,決めつけである.

61.4.2 「キリスト・賛美されるべき方の息子」

 本当はイエスに言ってもらいたかった文言である.その祭司長は自分から切り出す.「キリスト」も「賛美されるべき方の息子」も,終末時に到来する黙示的メシアを示唆する.「賛美されるべき方」と訳した「ホ・エウロゲートス」の原義は,「よく言われるべき人」.神に適用されると,「賛美されるべき方」となる.古典ギリシャ語には出てこない,キリスト教特有の用語.


62 ὁ δὲ Ἰησοῦς εἶπεν· Ἐγώ εἰμι, καὶ ὄψεσθε τὸν υἱὸν τοῦ ἀνθρώπου ἐκ δεξιῶν καθήμενον τῆς δυνάμεως καὶ ἐρχόμενον μετὰ τῶν νεφελῶν τοῦ οὐρανοῦ.

イエスは言った.「私こそが(キリスト・賛美されるべき方の息子)です.そしてあなたがたは見るでしょう/人間の息子を/右に座している/"力"の,そして来るのを/天の諸雲を伴って.


62.1 「イエスは言った.「私こそが(キリスト・賛美されるべき方の息子)です」

62.1.1 「イエスは言った」

 生前のイエスは,死後,クリスチャンたちによって神的キリストに祭り上げられた.ここではその信仰のキリストが歴史のイエスに投影されている.

62.1.2 「私こそが(キリスト・賛美されるべき方の息子)です」

 ((キリスト・賛美されるべき方の息子)は私の補足であるが,文脈がそれを要求する.黙示的メシアとしてのイエス像を堅持するクリスチャンたちが,歴史のイエスに付託して,自分たちのイエス像を提示している.

62.2 「そしてあなたがたは見るでしょう/人間の息子を/右に座している/"力"の,そして来るのを/天の諸雲を伴って」

62.2.1 「あなたがたは見るでしょう」

 その祭司長と一味に対する向こう意気が感じられる.イエスは殺されて終わりではない.天から再来する.それは妄想ではなく,あなたがたは,肉体の眼で確認するであろう,と言っている.

62.2.2 「人間の息子を/右に座している/"力"の」

(1)「人間の息子」

 その祭司長が「キリスト・賛美されるべき方の息子」と言ったのに対して,イエスは「人間の息子」と言う.ここは「キリスト」と同義である.

(2)「右に座している/"力"の」

 「右に座している」とは,不動の地位を意味する.「力」と訳した「デュナミス」の原義は,そういう意味.「力ある者」,ひいては全能の神を意味する.その右の座であるから,キリストとしてのイエスは神に匹敵する.

62.3 「そして来るのを/天の諸雲を伴って」

62.3.1 「来る」

 マルコ教会時代に流通していたメシア再来の信仰を示唆する.

62.3.2 「天の諸雲を伴って」

 「雲」と訳した「ネペレー」はそういう意味であるが,「天の諸雲」は意味不明.

 LXX ダニエル書 7章13節への言及と見なす見解もある.

ἐθεώρουν ἐν ὁράματι τῆς νυκτὸς καὶ ἰδοὺ ἐπὶ τῶν νεφελῶν τοῦ οὐρανοῦ ὡς υἱὸς ἀνθρώπου ἤρχετο, καὶ ὡς παλαιὸς ἡμερῶν παρῆν, καὶ οἱ παρεστηκότες παρῆσαν αὐτῷ.

私(ダニエル)は夜の幻の中で見ていた.そして見よ!天の諸雲の"上で"(エピ)人間の息子のような(者)が来た.そして日々の古い者のような(者)が,過ぎ去った.そして彼の側近の者たちも過ぎ去った.

 ダニエル書では「上に」(エピ)であるが,マルコでは「メタ」(共に)である.あるいは,「天の諸雲」のような天使の大軍勢を伴って,という風に解釈することができるかもしれない.わからないとしておこう.


63 ὁ δὲ ἀρχιερεὺς διαρρήξας τοὺς χιτῶνας αὐτοῦ λέγει· Τί ἔτι χρείαν ἔχομεν μαρτύρων;

その祭司長は彼(自分)のキトーンを引き裂いた後,言う.「さらに何の必要を私たちは持っているのですか?/証人たちの.


63.1 「その祭司長は彼(自分)のキトーン(複数形)を引き裂いた後」

63.1.1 「キトーン」(chitōn)

 古代ギリシャでは,素肌の上に着る衣服.古代ローマではトゥニカ(tunica).

63.1.2 「引き裂いた」

 悲嘆の表現である.創世記 37:29(ルベン); 士師記 14:19(サムソン); エステル記 41(モルデカイ)を参照.その祭司長は旧約聖書の英雄きどりか.その大祭司,身に付けていた複数のキトーンを引き裂いた.

63.2 「言う」

 罪作りな発言である.

63.3 「さらに何の必要を私たちは持っているのですか?/証人たちの」 

 その大祭司は議会を扇動し,多数者の支持を獲得しようとする.


64 ἠκούσατε τῆς βλασφημίας· τί ὑμῖν φαίνεται; οἱ δὲ πάντες κατέκριναν αὐτὸν ἔνοχον εἶναι θανάτου.

あなたがたは不敬神を聞きました.あなたがたには何と思われますか?」 全員が彼(イエス)に対して有罪判決を下した/死に相当すると.


64.1 「あなたがたは不敬神を聞きました」

64.1.1 「あなたがたは・・・聞きました」

 発言者の欺瞞の顔が思い浮かぶ.

64.1.2 「不敬神」

 元の言葉「ブラスペーミア」の原義は,「凶兆」「汚れた言葉」.転じて「神に対する不敬な言葉」.その祭司長は,イエスを不敬神者にでっちあげした.無実な人に対して「不敬神」と叫ぶ者こそが不敬神の者である・


65 καὶ ἤρξαντό τινες ἐμπτύειν αὐτῷ καὶ περικαλύπτειν αὐτοῦ τὸ πρόσωπον καὶ κολαφίζειν αὐτὸν καὶ λέγειν αὐτῷ· Προφήτευσον, καὶ οἱ ὑπηρέται ῥαπίσμασιν αὐτὸν ἔλαβον.

そして始めた/数人が/彼(イエス)につばを吐きかけることを.そして彼の顔に覆いをかぶせることを.そして彼に平手打ちすることを.そして彼に言うことを.「預言せよ」.そして下僕たちは殴打の数々をもって彼を受け取った.


65.1 「そして彼の顔に覆いをかぶせることを.そして彼に平手打ちすることを.そして彼に言うことを.「預言せよ」」

65.1.1 「そして始めた/数人が」

(1)「そして始めた」 マルコのクリスチャンたちは,イエスを憎む敵たちに対する反感を,暴挙の数々を羅列する.

(2)「数人が」

 その祭司長の腰ぎんちゃくであった何人かの議員であろう.リンチ.弱い者いじめ.

65.2 「彼(イエス)につばを吐きかけることを.そして彼の顔に覆いをかぶせることを.そして彼に平手打ちすることを.そして彼に言うことを.「預言せよ」」

65.2.1 「彼(イエス)につばを吐きかけること」

65.2.2 「彼の顔に覆いをかぶせること」

65.2.3 「彼に平手打ちすること」

65.2.4 「彼に言うことを.「預言せよ」」

 「預言せよ」は,からかい.預言という聖なることがらを,からかいの道具に使っている.これこそ不敬神である.以上が議員たる者たちの行為である.

65.3 「そして下僕たちは殴打の数々をもって彼を受け取った」

 「下僕たち」は神殿警察団であろう.彼らはイエスを散々殴りつけた上で,その身柄を受け取った.

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