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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

12/17 マルコ福音書のイエス (第142回)~〈及び腰のペトロ像〉を吟味する〜

2023年12月17日 主日礼拝

聖書講話   「マルコ福音書のイエス (第142回)

~〈及び腰のペトロ像〉を吟味する〜」  

聖書箇所    マルコ福音書 14章53〜59節   話者 三上 章



聖書協会共同訳

  [下線は改善の余地があると思われる部分]

53 人々は、イエスを大祭司のところへ連れて行った。祭司長、長老、律法学者たちが皆、集まって来た。54 ペトロは、遠くからイエスの後に付いて、大祭司の中庭まで入り、下役たちと一緒に座って、火にあたっていた。55 祭司長たちと最高法院の全員は、死刑にするためイエスにとって不利な証言を求めたが、得られなかった。 56 イエスに対する偽証をした者は多かったが、一致しなかったのである。57 ついに、数人の者が立ち上がって、イエスに対する偽証をして言った。58 「この男が、『私は人の手で造ったこの神殿を壊し、三日のうちに、手で造らない別の神殿を建ててみせる』と言うのを、私たちは聞きました。」59 しかし、この場合も、彼らの証言は一致しなかった。


以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.


53 Καὶ ἀπήγαγον τὸν Ἰησοῦν πρὸς τὸν ἀρχιερέα, καὶ συνέρχονται πάντες οἱ ἀρχιερεῖς καὶ οἱ πρεσβύτεροι καὶ οἱ γραμματεῖς.

そして彼ら(神殿警察団)は連行した/イエスを/その祭司長の方へ.そして一緒に来る/全員が←祭司長(団)と長老(団)と書記(団)の.


53.1 「そして彼ら(神殿警察団)は連行した/イエスを/その祭司長の方へ」

53.1.1 「彼ら」

 神殿警察団をさす.

53.1.2 「その祭司長の方へ」

 「の方へ」とは,おそらく祭司長らが主宰するサンヘドリン(ユダヤ教議会)へということであろう.「その」という定冠詞がついている.祭司長団の中で議長をつとめる祭司長をさすと思われる.

53.2 「そして一緒に来る/全員が←祭司長(団)と長老(団)と書記(団)の」

53.2.1 「一緒に来る」

 ユダヤ教議会に議員として登院する.この文章は福音書記者マルコによる付加と思われる.

53.2.2 「全員が←祭司長(団)と長老(団)と書記(団)の」

 これがユダヤ教議会の構成員.「全員」は,これから開催されるイエス裁判の重要さを際立たせる.


54 καὶ ὁ Πέτρος ἀπὸ μακρόθεν ἠκολούθησεν αὐτῷ ἕως ἔσω εἰς τὴν αὐλὴν τοῦ ἀρχιερέως καὶ ἦν συγκαθήμενος μετὰ τῶν ὑπηρετῶν καὶ θερμαινόμενος πρὸς τὸ φῶς.

そしてペトロが遠くからイエスに付いていった/内まで/その大祭司の中庭の中へ.そして一緒に座っていた←下僕たちと一緒に.そして体を暖めていた←その燈火の方へ.


54.1 「そしてペトロが遠くからイエスに付いていった/内まで/その祭司の中庭の中へ」

54.1.1 「ペトロ」 

 この部分もマルコによる創作.逮捕劇の間奏曲の役割を果たす.先に若い学友は逃げたけれども,ペトロは逃げなかった,とマルコは言いたい.

54.1.2 「遠くから」

 ペトロの及び腰をしめす.

54.1.3 「イエスに付いていった」

 及び腰であっても,とにかくイエスに付いていったことに違いはない.

54.1.4 「内まで/その大祭司の中庭の中へ」

 「内まで」というのは「その大祭司の中庭の中へ」ということ.イエスについて行くうちに少し元気が出たのか,臆病なわりには思い切った行動である.

54.2 「そして一緒に座っていた←下僕たちと一緒に.」

 中に入ったからには,ペトロはこのように振る舞わざるをえない.「下僕たち」と訳したヒュペーレタイは,本来は,古代ギリシャの三段櫂船の漕ぎ手.ここではイエスを逮捕し連行した神殿警察団であろう.軽蔑の意味合いを含んでいる.

54.3 「そして体を暖めていた←その燈火の方へ」

54.3.1 「その燈火の方へ」

 この姿勢はペトロの顔を照らし出す.


55 οἱ δὲ ἀρχιερεῖς καὶ ὅλον τὸ συνέδριον ἐζήτουν κατὰ τοῦ Ἰησοῦ μαρτυρίαν εἰς τὸ θανατῶσαι αὐτόν, καὶ οὐχ ηὕρισκον·

(さて)その大祭司と全ユダヤ教議会は求めた/イエスに反対する証言を/彼を死刑に処するために.そして彼らは(証言を)発見しなかった.



55.1 「(さて)その大祭司と全議会は求めた」

 始めからイエスの有罪を決めつけた裁判.イエスが被告ならば,始めにその弁明を聞くのが正しい裁判というものであろう.彼らは正義よりも自分たちの激情を優先した.

55.2 「全議会」

 「議会」と訳した「シュネドリオン」の原意は,「集会」.それに「全」(ホロス)という形容詞がついている.ナチスの「ホロコースト」を連想してしまう.

55.3「イエスに反対する証言を」

 ナチス的全議会は,告発状の読み上げもなしに,いきなりイエス告発を支持する証言だけを求める.イエスを弁護する証言は求められない.もしかしたら,シュネドリオンの中にイエスを擁護する人がいたかもしれないのに.

55.4 「彼を死刑に処するために」

 有罪だけではなく,量刑が死刑であることも事前に決定されていた.およそ法律に違反する裁判である.中世ヨーロッパの異端審問を連想する.

55.5 「そして彼らは発見しなかった」

 イエスの有罪を証明する決定的な反対証言者は,発見されなかった.


56 πολλοὶ γὰρ ἐψευδομαρτύρουν κατ’ αὐτοῦ, καὶ ἴσαι αἱ μαρτυρίαι οὐκ ἦσαν.

なぜなら多くの人たちがイエスに反対する偽証を語った.そして同じではなかった/諸証言は.


56.1 「なぜなら多くの人たちがイエスに反対する偽証を語った」

56.1.1 「なぜなら」

 「ガル」という小さな単語であるが,大きな意味を含んでいる.決定的な反対証言者が発見されなかった理由を示す.

56.1.2 「多くの人たち」

 全議会と意気投合する人たちや金で雇われた人たちであろう.

56.1.3 「イエスに反対する偽証を語った」

 彼らが語ったのは,証言ではなく偽証(プセウドマルチュレオー)である.「プセウドス」(偽り)という名詞と「マルチュレオー」(証言する) という動詞の結合で,「偽りを証言する」という意味.偽証こそ犯罪も犯罪,大きな犯罪である.

56.1.4 「そして同じではなかった/諸証言は」

 偽証は,食い違いをもつものである.そもそも言葉の証言だけでは弱い.物的証拠のような強い証拠が必要である.冤罪も物的証拠によって覆されることがある.


57 καί τινες ἀναστάντες ἐψευδομαρτύρουν κατ’ αὐτοῦ λέγοντες ὅτι Ἡμεῖς ἠκούσαμεν αὐτοῦ λέγοντος

そしてある人たちが立ち上がった後,イエスに反対する偽証を語った.曰く.「私たち自身が,彼(イエス)が(次のように)言うのを聞きました.


57.1 「そしてある人たちが立ち上がった後,イエスに反対する偽証を語った」

57.1.1 「ある人たち」

 相当やましい人たち.この57〜58節も,マルコによる創作.

57.1.2 「立ち上がった後」

 ということは,議員たちは座った姿勢であったことがわかる.発言者は立ち上がる.

57.1.3 「偽証を語った」

 入れ替わり立ち替わり空しい偽証の羅列が続く.偽証を先導する全議会の,イエスに対する殺意は執拗である.

57.2 「私たち自身が,彼(イエス)が(次のように)言うのを聞きました」

57.2.1 「私たち自身が」

 「ヘーメイス」という強い人称代名詞.他でもなく私たちが,という意味合い.そこまで嘘を言うのか.浅ましい.


58 ὅτι Ἐγὼ καταλύσω τὸν ναὸν τοῦτον τὸν χειροποίητον καὶ διὰ τριῶν ἡμερῶν ἄλλον ἀχειροποίητον οἰκοδομήσω·

「私自身が壊すつもりです/この神殿を←手で造られる.そして三日間で他の(神殿)を←手で造られない/建てるつもりです」


58.1 「私自身が壊すつもりです/この神殿を←手で造られる」

 イエスがこのように言ったと,偽証者たちは嘘の上塗りをする.イエスは神殿破壊を計画しているテロリストであるという偽証である

58.1.1 「手で造られる」

 口述の「手で造られない」の伏線である.

58.2 「三日間で他の(神殿)を←手で造られない/建てるつもりです」

 再来のメシアによって地上の腐敗した神殿が破壊され,新たに神聖な神殿が建設されるという,黙示的終末論を反映している.偽証者たちは,イエスの言動はヤハウェに対する冒涜罪であると言いたい.


59 καὶ οὐδὲ οὕτως ἴση ἦν ἡ μαρτυρία αὐτῶν.

そしてどれも,こんな風に,同じではなかった/彼らの証言は.


 他にも根拠のない偽証がだらだら語られた.裁判ではなく異端尋問である.

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