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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

10/15 ユダの福音書〜イエスを真に 理解した知識者〈イスカリオテのユダ〉

更新日:2023年10月16日

2023年10月15日 主日礼拝

聖書箇所  知恵の書 7章21〜30節

特別講話  「ユダの福音書〜イエスを真に理解した知識者

〈イスカリオテのユダ〉〜」

話者  三上 章


知恵の書 7章21〜30節

21 およそ隠れたこともあらわなことも私は知った。22 万物の造り手である知恵が/私に教えたからである。/知恵の内には霊がある。/その霊は、理知に富み、聖なるものであり/単一でありながら多様、軽妙で敏捷/明白で、汚れなく/明確で、害を与えず、善を愛し、鋭敏で 23 何ものにも阻まれず、善を行い、人間愛に満ち/堅固、安全で、憂いなく/すべてを成し遂げ、すべてを監視し/ほかのすべての、理知的で清らかで/最も軽妙な霊に染み渡る。24 知恵の動きはいかなる動きよりも敏捷で/清らかさゆえにすべてのものに染み込み/行き渡る。25 知恵は神の力の息吹/全能者の純粋な栄光から出る流れであり/それゆえに汚れたものは/何一つその中に入り込まない。 26 知恵は永遠の光の反映/神の働きを映す曇りのない鏡/神の善の似姿である。27 知恵は単一でありながら/何事であれなすことができ/自らの内にとどまりながら/すべてのものを新たにする。/世々にわたって聖なる魂に移り住み/彼らを神の友や預言者とする。28 知恵と共に住む者のほかには/神は何も愛されない。29 知恵は太陽よりも美しく/すべての星の上に位置し/光と比べてもさらに輝かしい。30 /というのも、光は夜の闇に取って代わられるが/悪が知恵に打ち勝つことはないのだから。


1 世紀の大発見

 1700年の埋没を経て『ユダの福音書』を含む写本が浮上


Peuaggelion nioudas


推定成立年代は,放射性炭素による年代測定によると,140年から160年前後.この写本は「チャコス写本」(Codex Tchacos)と呼ばれる.『ユダの福音書』は33〜58頁.


2 『ユダの福音書』の一断面

チャコス写本 (the Codex Tchacos)より.※275 CE, パピルス.

Maecenas Foundation for Ancient Art, Basel, Switzerland

※ 放射性炭素による 年代測定


3 チャコス写本の発見場

4 『ユダの福音書』コプト語原典の冒頭

5 日本語訳『ユダの福音書』

『原典 ユダの福音書』編集者 ロドルフ・カッセル マービン・マイヤーグレゴール・ウルスト バート・D・アーマン他(日経ナショナル ジオグラフィック社,2006年)※コプト語からの英語訳 (The Gospel of Judas) の日本語訳である.


33 ⲡⲗⲟⲅⲟ{ⲥ} ⲉⲧϩⲏⲡ ̀ⲛ̅ⲧⲁⲡⲟⲫⲁⲥⲓⲥ ⲛ̅{ⲧⲁ ϊ}ⲏ̅—ⲥ ϣⲁϫⲉ ⲙⲛ̅ ϊⲟⲩⲇⲁⲥ 2 {ⲡⲓ}ⲥⲕⲁⲣⲓⲱⲧ{ⲏⲥ} ⲛ̅ϩⲏⲧϥ̅ sss ⲛ̅

The secret account of the revelation that Jesus spoke in conversation with Judas Iscariot during a week three days before he celebrated Passover.

託宣の秘密の説明/イエスが語った/ユーダス・イスカリオートとの対話で/ある週の間に/三日前←彼(イエス)が過越を祝った.

33.1 「託宣の秘密の説明」

 イスカリオテのユダ(以後「ユダ」と略す)は,彼だけが,イエスから秘密の「託宣」(アポパシス)を受け取った.秘義を受けた者.免許皆伝である.ユダはそれほど深くイエスを理解した.その理解は,原始キリスト教正統派の皮相的ドグマ信奉の水準とは次元が異なる.

35 Judas [said] to him, "I know who you are and where you have come from. You are from the immortal realm of Barbelo. And I am not worthy to utter the name of the one who has sent you."

ユダは彼に[言った].「私は知っています/あなたがだれであるかを/そしてあなたがどこから来たかを.あなたは不死の王国バルベーロからです.そして私は口に出すに値しません/あなたを派遣した方の名前を」


35.1 「私は知っています」

 ユダは,イエスに関する「完璧な知識(グノーシス)」をもっている「知識者(グノースティコス)」である.彼は字面の根底にある真理を探究する「愛知者(ピロソポス)」である.その限りにおいて,ソクラテスやプラトンの系譜に連なる.


35.2 「不死の王国バルベーロー」

35.2.1 「領域」(アイオーン)

 「アイオーン」は「神的な存在」.

35.2.2 「バルベーロー」

 グノーシス主義の主流宗派の一つであるセツ派の文書では,バルベーローは万物の神なる母体で,「無限のもの」と呼ばれる父のプロノイア(神慮)である.ユダはイエスがバルベーローに由来すると明言する.つまり,イエスが来たのは,不滅の真の神の王国からであって,ユダヤ教徒の創造神の下位の王国からではない.ユダの理解するイエスは,通俗的な神々の水準を隔絶した絶対的な真の神を指さしている.このような見方の背後には,プラトンが提唱した,現象の世界を隔絶した叡知の世界であるイデア界の理念が横たわっている.

35.2.2 「私は口に出すに値しません/あなたを派遣した方の名前を」

 ユダは,神についての自分の無知を表明する.ソクラテスの自己認識としての「無知」(アグノイア.グノーシスの欠如)を連想させる.原始キリスト教正統派は,神を知らないのに知っていると思い込む.ユダは,神を知らないからそのとおり知らないと告白する.

 以下コプト語原典は省略.


43 Judas said to [him, "Rabb]i, what kind of fruit does this generation produce?" Jesus said, "The souls of every human generation will die. When these people, however, have completed the time of the kingdom and the spirit leave them, their bodies will die but their souls will be alive, and they will be taken up."


ユダは[イエスに]言った.「[ラ]ビ,どのような種類の実を,あの世代(神性の王国に属する世代)はもたらすのですか?」イエスは(ユダに)言った.「あらゆる人間の世代の魂は死ぬであろう.しかし,これらの人々(天の王国に属する人々)が(地上の)王国の時を終了し,その霊が彼らから立ち去る時,彼らの肉体は死ぬであろうが,彼らの魂は生きたままであろう.そして彼らは(天へ)引き上げられるであろう」


43.1 「イエスは(ユダに)言った」

 ユダはイエスから特別の教示を受ける.それは以下のとおり.


43.2 「あらゆる人間の世代の魂は死ぬであろう」

 ここには,「この世代」(地上の人間)と「あの世代」(神性の王国に属する世代)との対比がある.「この世代」の人は,死ねばそれですべて終わりである.魂も死ぬ.


43.3 「しかし,これらの人々(天の王国に属する人々)が(地上の)王国の時を終了し,その霊が彼らから立ち去る時,彼らの肉体は死ぬであろうが,彼らの魂は生きたままであろう.そして彼らは(天へ)引き上げられるであろう」

43.3.1 「しかし,これらの人々(天の王国に属する人々)が(地上の)王国の時を終了し,その霊が彼らから立ち去る時」

 「これらの人々」,すなわち「あの世代」の人々は,違う.彼らは死ぬ時,その霊が立ち去るだけである.この考えでは,「あの世代」の人間は肉体,霊,魂からできていることになる.肉体は,人の本質である内なる魂を包む物質.霊は肉体を動かす力であり,肉体に生命を与える.「この世代」の人は,霊をもたない.肉体と魂だけしかもたない.肉体の死と共に魂も死ぬ.しかし,「あの世代」の人は,肉体の死は霊が肉体から立ち去る機会にすぎない.

43.3.2 「彼らの肉体は死ぬであろうが,彼らの魂は生きたままであろう」

 「あの世代」の人においては,魂は死後も生き続ける.そして天の家へと引き上げられる.これが人間の救済である.原始キリスト教正統派が主張する,罪からの救済ではなく,死からの救済である.魂の不死,これが救済の本質であるという真理を,ユダはイエスから教示された.

 この魂の不死が救済であるという考えは,プラトンがその著作『パイドン』の中で展開する,オルペウス教の教説〈肉体の牢獄から魂が解放されることが救済である〉に溯行するであろう.


46 Judas said, "Master, could it be that my seed is under the control of the rulers?" Jesus answered and said to him, "Come, that I [—two lines missing—], but that you will grieve much when you see the kingdom and all its generation."

When he heard this, Judas said to him, "What good is it that I have received it? For you have set me apart for that generation." Jesus answered and said, "You will become the thirteenth, and you will be cursed by the other generations—and you will come to rule over them. In the last days they will curse your ascent [47] to the holy [generation]."


 ユダは言った.「先生,ありえるでしょうか?/私の種子が支配者たちの掌中にあるということが」

 イエスは彼に答えて言った.「来なさい,私は[─二行欠落─]こと,だがあなたは大いに悲しむであろうことを/あなたがその王国とその世代のすべての人々を見る時」

 これを聞いた時,ユダはイエスに言った.「何の役に立ちますか?/わたしがそれを受け取ったことは.なぜならあなたは私を特別に指名したのですから/あの世代のために.

 イエスは答えて言った.「あなたは13番目となるでしょう,そしてあなたは呪われるでしょう/他の諸世代によって──そしてあなたは彼らを支配するでしょう.最後の日々には,彼らは呪うでしょう/あなたの上昇を←その聖なる世代への」


46.1 「先生,ありえるでしょうか?/私の種子が支配者たちの掌中にあるということが」

46.1.1 「私の種子」

 人間の霊的な部分.内なる神性の輝き.総体としては,神に属する人々の子孫を指す.セツ派文書でグノーシス派(グノースティコイ.知識者たち)の人々は,セツの種子,あるいはセツの子孫と呼ばれることがある.ユダは霊をもっており,内なる神性の輝きを宿している.

46.1.2 「支配者たち」

 「アルコーンたち」.アルコーンとは,この世の支配者たち,特にデミウルゴス(低級な造物主)と協力している天の諸力.

46.1.3 「ありえるでしょうか?/私の種子が支配者たちの掌中にあるということが」

 ユダが宿す神性の種子は,いかなる強力な対抗勢力によっても損なわれることがない.この部分は,「私の種子が,支配者たちを征服する」とも解釈することができる.


46.2 「何の役に立ちますか?/わたしがそれを受け取ったことは.なぜならあなたは私を特別に指名したのですから/あの世代のために.」

46.2.1 「なぜならあなたは私を特別に指名したのですから/あの世代のために」

 ユダは,天の王国に属する世代を代表する者として,イエスによって特別に指名された存在である.「ユダの裏切り」は,イエスの意図によるものであり,ユダは,その意図を確実に達成する奉仕のために,特別に選ばれた栄えある祭司である.


46.3 「あなたは13番目となるでしょう」

 ユダは12人の使徒集団から除外されたので,「13番目」.44頁の終わりの部分では,「13番目の霊」(ダイモーン)と呼ばれている.ダイモーンは,プラトンの著作『饗宴』202e-203aにおける,ソクラテスを誤りから救い続けた「ダイモーン的なことども」を示唆する.ソクラテスにとってダイモーンは善い神であった.ユダは12人の使徒集団を担ぎ上げる原始キリスト教正統派から隔絶し,彼らを凌駕するダイモーンである.ユダがダイモーンであるのは,ユダの真実の本性が霊的なものだからである.


46.4 「あなたは彼らを支配するでしょう」

 ユダは正統派集団から除外され,彼らによって呪われたが,実は彼こそは正統派を支配する王である.ユダこそは正統派であり,正統派は異端であると,ユダのイエスは言う.


46.5 「あなたの上昇←その聖なる世代への」

 ユダはイエスから「上昇」のお墨付きをいただく.「上昇」は,プラトンの「アナゴーゲー」の思想を反映している.彼によると,愛智の道を邁進した魂は,肉体が死ぬ時に,肉体の牢獄から解放され天のイデアの世界へ軽やかに上昇していく.プラトンを継承した後のプラトニストたちも,神への魂の上昇としてのアナゴーゲーの思想を尊び,保持した.ユダの魂は,死によって少しも損なわれることなく,「その聖なる世代」,すなわちかしこの幸福な哲学者たちの世界へ携え上げられる.


56 "But you will exceed all of them. For you will sacrifice the man that clothes me.

(イエスはユダに言った) 「しかしあなたは彼らのすべてを凌駕するでしょう.なぜならあなたは犠牲としてささげるでしょうから/私を覆う人間を」


56.1 「あなたは彼らのすべてを凌駕するでしょう」

56.1.1 「彼らのすべて」

 洗礼を受けた原始キリスト教正統派のクリスチャンたち.『ユダの福音書』のイエスが,洗礼の儀式を非難しているのかどうかは,不明である.

56.1.2 「凌駕するでしょう」

 イエスはユダを,正統派クリスチャンたちに比べて,ずば抜けてすぐれた弟子として認定する.その認定の根拠は,以下の通り.


56.2 「なぜならあなたは犠牲としてささげるでしょうから/私を覆う人間を」

56.2.1 「犠牲としてささげるでしょう」

 ユダがイエスを「手渡す」(パラディドーミ)ことの本質は,イエスを犠牲としてささげるという聖なる栄えある奉仕である.この奉仕をユダはイエスから仰せつかった.

56.2.2 「私を覆う人間」

 「私」とは真のイエス.真のイエスを覆う「人間」とは,イエスの真実の霊的自己を覆っている肉体の衣である.ユダは,真のイエスを覆っている肉体を犠牲としてささげ,イエスを助けるようにイエスによって命じられた.ユダの聖なる奉仕によって,イエスの死は,内なる霊的人間の解放へと変えられる.

 愛智の霊によって愛智の魂が浄化され続けること,肉体の死を機会として,肉体の牢獄から愛智の魂が解放され,叡知の世界に軽やかに飛翔すること,これがユダ福音書のイエスがユダに啓示した救済である.

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