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  • 執筆者の写真平岡ジョイフルチャペル

1/14 マルコ福音書のイエス (第145回)~〈ローマの代官ピラトゥスの尋問〉を吟味する〜

2024年1月14日 主日礼拝

聖書講話   「マルコ福音書のイエス (第145回)

                   ~〈ローマの代官ピラトゥスの尋問〉を吟味する〜」  

聖書箇所    マルコ福音書 15章1〜5節   話者 三上 章



    聖書協会共同訳

  [下線は改善の余地があると思われる部分]

1 夜が明けるとすぐ、祭司長たちは、長老たちや律法学者たちと共に最高法院全体で協議した後、イエスを縛って連れ出し、ピラトに引き渡した。2 ピラトがイエスに、「お前はユダヤ人の王なのか」と尋問すると、イエスは、「それは、あなたが言っていることだ」とお答えになった。3 そこで祭司長たちが、いろいろとイエスを訴えた。4 

ピラトが再び尋問した。「何も答えないのか。あんなにお前を訴えているのに。」5 しかし、ピラトが不思議に思うほどに、イエスはもう何もお答えにならなかった。

 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解である.


1 Καὶ εὐθὺς πρωῒ συμβούλιον ποιήσαντες οἱ ἀρχιερεῖς μετὰ τῶν πρεσβυτέρων καὶ γραμματέων καὶ ὅλον τὸ συνέδριον δήσαντες τὸν Ἰησοῦν ἀπήνεγκαν καὶ παρέδωκαν Πιλάτῳ.

そしてすぐに(朝)早くに協議を行った後,祭司長たちは←長老たち・書記たちを伴う/そして全議会が,イエスを緊縛した後,連行し,引き渡した←ピラトゥスに.


1.1 「そしてすぐに(朝)早くに協議を行った後」

1.1.1「そしてすぐに」

 「カイ エウテュス」はマルコの口癖.特に意味はない.

1.1.2 「(朝)早くに」

 イエスを殺すことを企んだ首謀者たちは,ついにイエスに死刑判決を下すことができる段階にまで事を進めた.彼らは死刑執行を急いでいた.そこで早朝にユダヤ教議会を招集し,死刑判決を下した.

1.2 「協議を行った後」

 ユダヤ教議会は早朝に開催されたということ

1.3 「祭司長たちは←長老たち・書記たちを伴う/そして全議会」

 「祭司長たち」が首謀者.「長老たち・書記たち」は後付けに思われる.彼らも連座させられたと,マルコは言いたい.「全議会」も後付け.全議員が首謀者たちと取り巻きによって,イエスの死刑判決へと扇動された.

1.4 「イエスを緊縛した後,連行し,引き渡した←ピラトゥスに」

1.4.1 「イエスを緊縛した」

 決して逃亡を許さない措置.

1.4.2 「連行し,引き渡した←ピラトゥスに」

 神殿警察は緊縛されたイエスを議会から連行し,ピラトゥスに引き渡した.ピラトゥスは,ローマ帝国の直接属州であるユダヤ地方を統治する総督の代官.死刑執行権は,ユダヤにではなくローマ帝国の管轄に属していた.それゆえ,イエスは,ユダヤ総督代官のピラトゥスによって死刑の最終判決をくだされるべく,ローマ帝国の裁判に引き渡された.

1.3.3  ポンティウス・ピラトゥス Pontius Pilatus

 かつての同僚,古代ローマ史研究者の島創平氏による.私の修正も加えてある.

 ヨセフスの『ユダヤ古代誌』18巻およびフィロン「ガイウスへの弁明書」38章によると,第5代のユダヤ総督。在職26-36年。生没年不詳。ラテン語ではPontius Pilatusと綴る。総督就任の際,ローマ皇帝像を描いた軍旗を掲げてエルサレムに入城したり,水道の建設資金をエルサレム神殿の金庫から流用し,これに抗議する民衆を虐殺するなど,ローマの権力を背景に高圧的な反ユダヤ政策をとった。

 他方,新約聖書の福音書によると,イエス裁判の際には,ユダヤ教徒の圧力に屈して,不本意ながら彼を十字架刑に処した。その後失政を重ねたあげく,36年にサマリアの民衆虐殺事件でローマに召還され,自殺したとも伝える.


2 καὶ ἐπηρώτησεν αὐτὸν ὁ Πιλᾶτος· Σὺ εἶ ὁ βασιλεὺς τῶν Ἰουδαίων; ὁ δὲ ἀποκριθεὶς αὐτῷ λέγει· Σὺ λέγεις.

そして尋問した←彼(イエス)を←ピラトゥスが.「あなたがユダヤ人たちの王であるのか?」しかし彼(イエス)は答弁者として彼(ピラトゥス)に言う.「あなたが(そう)言っています」


2.1 ブルトマンの伝承史説

 ブルトマンは,この部分は古い伝承への後代の付加という仮説を提示する.しかしながら,初期キリスト教徒たちの護教論の観点からは,すでに古い伝承の段階でピラトゥスの尋問が含まれていたとしても,おかしくはない.キリスト教徒たちの観点からすると,ピラトゥスによって「ユダヤ人たちの王」と呼ばれたイエスは,実は黙示的メシアであった.

2.2 「尋問した←彼(イエス)を←ピラトゥスが」

 イエスに対するピラトゥスの尋問は,ローマ国法に違反する犯罪をイエスがおかしたかの一点に集中する.

2.3 「あなたがユダヤ人たちの王であるのか?」

2.3.1 「あなたが」

 「シュ」という代名詞.強調である.「あなたこそが」「他でもなくあなたは」という意味合い.

2.3.2 「ユダヤ人たちの王であるのか?」

 敵対者たちは,イエスは「ユダヤ人たちの王」を僭称したという理由で,ピラトゥスにイエスを告訴した.ローマの政治家であるピラトゥスは,おそらくこの称号をローマ帝国の安全を騒擾するテロリストという意味に受け取ったであろうと思われる.「お前こそが・・・であるのか?」という尋問は,告訴者たちはそう言っているが,あなたはほんとうにそうであるのか?」と確認している.

2.4 「あなたが(そう)言っています」

2.4.1 「あなたが」

 同じく「シュ」という強調の代名詞.

2.4.2 「(そう)言っています」

 これがピラトゥスの尋問に対するイエスの答弁である.「そう」は私の補足.原文にはない.肯定なのか否定なのかあいまいである.わざとあいまいな答え方をした.イェスはピラトゥスにゲタを預けた.「私をテロリストだと言っているのは,他でもあなたです.もしそう言うのであれば確実な証拠をそろえた上で,言ってください」.イエスは,法的観点からピラトゥス反駁(反対尋問)を行っている.


3 καὶ κατηγόρουν αὐτοῦ οἱ ἀρχιερεῖς πολλά.

そして彼(イエス)に対して告訴した←祭司長たちは/多くのことを.


3.1 「彼(イエス)に対して告訴した←祭司長たちは」

 告訴理由(訴因)を求められた祭司長たちは,それを示さなければならない.

3.2 「多くのことを」

 あいまいである.確実ではない.祭司長たちはあの手この手と言い募った.冤罪をでっち上げる人たちが用いる常套手段である.彼らの虚偽に対して,イエスが「うそだ」と反論したところで,彼らは引き下がらない.ユダヤ教議会は,すでにイエスに死刑判決を下したのだから.問答無用である.イエスは彼らのいかさま告訴に対して反対尋問を行わなかったようである.「話せばわかる」相手ではない.


4 ὁ δὲ Πιλᾶτος πάλιν ἐπηρώτα αὐτὸν λέγων· Οὐκ ἀποκρίνῃ οὐδέν; ἴδε πόσα σου κατηγοροῦσιν.

ピラトゥスは再び尋問した←彼(イエス)を.曰く.「あなたはどうしても何も答弁しないのか?見よ!どれほど多くのことを,お前に対して彼らは告訴していることか」


4.1 「ピラトゥスは再び尋問した←彼(イエス)を」

 イエスは祭司長たちの訴因に対して反対尋問を行わないので,ピラトゥスは再度イエスを尋問した.それがローマ方式であったようである.

4.2 「あなたはどうしても何も答弁しないのか?」

 ピラトゥスはイエスに答弁を強く促している.

4.3 「見よ!どれほど多くのことを,あなたに対して彼らは告訴していることか」

4.3.1 「見よ」

 ギリシャ語は「イデ」.注意を喚起する間投詞.「ほら」という意味合い.


5 ὁ δὲ Ἰησοῦς οὐκέτι οὐδὲν ἀπεκρίθη, ὥστε θαυμάζειν τὸν Πιλᾶτον.

しかしイエスはもはや何も答弁しなかった.その結果,不思議に思った←ピラトゥスは.


5.1 「イエスはもはや何も答えなかった」

5.1.1 「もはや・・・なかった」

 ピラトゥスに対する答弁に関するかぎり,イエスはもはや答弁することがない.

5.2 「その結果,不思議に思った←ピラトゥスは」

5.2.1 「不思議に思った」

 一般に裁判において,被告はあくまでも自分の無罪を言い募る.特に量刑が死刑か否の場合,被告は泣き落としなどあらゆる手段を用いる.イエスはそういうことを一切やらない.正々堂々としている.そういう人をピラトゥスは,これまで見たことがなかったようである.「不思議に思った」と訳した「タウマゾー」は,根底に「驚嘆」「驚愕」「不思議」の概念をもっている.ピラトゥスはイエスの態度にたまげた. 

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